子宮頸がん予防のためのワクチン接種の重要性

(2023年2月25日 付)

「9価」ワクチンで高リスク回避

「高リスク型HPVウイルス」は13種類

軽部彰宏院長の写真
由利組合総合病院 院長
軽部彰宏 氏

 子宮頸(けいがん)は子宮の入り口にできるがんで、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が要因となります。そのウイルス感染を防止するために、ワクチンがあるのです。HPVは実は100種類以上あると言われており、中でも子宮頸がんに関係しているのが13種類。16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68型でこれらを「高リスク型ウイルス」と言います。特に16、18型が子宮頸がんの約6割を占めます。

 HPVは性交渉によって子宮頸部の細胞に感染し、上皮内病変(前がん病変)を経てがんになります。上皮内病変は軽度、中度、高度と、病変が進むほどがん化のリスクが高くなります。軽度病変の多くはウイルスが自然消失してしまい、約8割は正常に戻ります。軽度病変の約1%が治療の対象になる高度病変以上になると言われています。高度病変からさらに進行した浸潤病変が子宮頸がんとなります。

 由利組合総合病院で2008年~21年までに手術・治療した患者さん331例をまとめたデータを紹介します。高度病変は、110例の30代にピークがありました。20歳代以上の全ての年齢層で浸潤がんが認められますが、浸潤がんの人数が一番多いのが24例の60歳以上の患者さんでした(表1)。浸潤がんで発見された理由は、検診などを受けずに放っておいたため。定期的に検診を受けて上皮内病変で発見され、高度病変の段階で治療ができれば、手遅れになることはないのです。

「子宮頸がんの年齢層別の症例数」のグラフ

 331例のHPVの型を調べたところ、16型が最も多い120例で、52、58、31、18型の順でした。進行した浸潤がんではHPV16、18型が多く発見されるようになり、欧米で70%、日本では60%程度であることが知られています。日本人には52、58型が多いという特徴があります。これまで国内の定期接種で使われてきた「2価」「4価」のワクチンは16、18型に対する予防効果があります。現在、世界で主流となってきている9価ワクチンは、日本人に多い52、58型に対しても予防効果が認められます。任意接種であれば、国内でも2021年3月から9価ワクチンが接種可能になっています。ただ、9価は費用が高いのがデメリットです。

 2価、4価は小学6年生から高校1年生の女性を対象に無料の定期接種で使われています。さらに、今年4月から9価ワクチンも定期接種として選択できるようになる予定です。ワクチン効果は10年、15年先に出てくるもので、接種直後の実感は薄いかもしれませんが効果は必ずありますのでこの定期接種対象の時期に打つことをオススメします。

HPV併用検診で見落としゼロに

 実は、由利本荘市は2価のHPVワクチンが定期接種になる前、全国で2番目(2009年4月)に助成を始めた自治体です。にかほ市もすぐに続きました。また、由利本荘市とにかほ市は、「HPV併用検診」を行っているのも特長です。子宮がん検診では細胞診で病変を発見しますが、同時に危険なウイルスがいないかも検査します。こちらは2014年4月にスタートしました。細胞診だけでは病変を見逃すことがあり、HPV併用検診で「見落とし」をほぼゼロに減らすことができます。この検診方法が全県に広がってくれることを期待します。

 ワクチン接種の効果ですが、由利本荘地区で2012年度~21年度までの検診時27歳以下の患者さん1490人のデータを見ると、細胞診異常ではワクチン接種なしが8・3%、接種ありが4・1%で減少率が50・1%。高リスク型(HC)陽性はワクチン接種なしが23・5%、接種ありが11・4パーセントでこちらも51・4%の減少という結果となりました(表2)。また、病変ではワクチン接種なしでは軽度病変だけでなく、中度・高度の患者さんもいましたが、接種ありでは軽度病変だけでした。病変の結果から見ても、ワクチンの効果は高いと言えます。

「細胞診とHC検査から見たHPVワクチンの効果」のグラフ

 さらに20歳~39歳までの子宮頸がんHPV型(2008~21年、174例)のまとめでは、16、18型が51・1%、31、33、45、52、58型が39・1%となっており、9価ワクチンの有効性は90%を超えることが分かりました。

 できればこれから接種を考えている若い方には9価ワクチンをオススメしますが、2価、4価のワクチンでももちろん、効果はありますので、親御さんには接種の検討をしてほしいと思います。さらに検診(できればHPV併用検診)の両輪で県内の子宮頸がん制圧を目指しましょう。

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