治せる病気になった今、検診でがんが見つかることは、大きなメリットなのです。

(2015年7月8日 付)

早期がんが見つかり、早期治療に向かえば医療費は当然、進行がんのそれより安く済みます。

秋田県総合保健事業団常務理事兼参与(医学博士)
戸堀 文雄さん vol.4

―治る病気となったがんで死なないため県民にメッセージを。

 県内でがん検診を受ける人は経年受診します。一方で、受けない人は頑として受けない。受診者の固定化を何とかしなければなりません。

 受けない人をいかに、検診に向かわせるのか。本県では未受診者に保健師らが電話などで直接受診を働き掛ける「コール・リコール事業」を展開しています。この事業により、すべてのがんの受診率がある程度上がりましたが、やはり受けない人もいます。

 そこで、行政などによる積極的な働き掛けに加え経済面でのアプローチも必要ではないかと考えています。検診により早期がんが見つかり、早期治療に向かえば医療費は当然、進行がんのそれよりはるかに安く済みます。そこに、例えば受診者の治療に伴う医療費負担を軽減したり、医療保険料を安くしたりといったことができないか―と思います。制度的に難しい事かもしれませんが、受診したことによる具体的なメリットが見えることで、受診に向けた機運は大きく高まることは確かです。

 医療費の高いアメリカやヨーロッパでは子宮がん検診の受診率が8~9割にも上っています。検診でがんが見つかることは、受診者にとって心理的にはデメリットでも、がんが治せる病気になった今、本当は大きなメリットなのです。

 本県では、中高生等を対象にがん教育を行っています。がん検診受診や生活習慣改善の重要性を若い世代に知ってもらうのが目的です。「三つ子の魂百まで」の言葉通り「がん検診は受診する」という刷り込みは将来、大きな効果となるはずです。また、教育を受けた子から親、祖父母への波及効果もあります。

 また、がん検診で要精検になった人の精検受診率が低いことも問題になっています。要精検になったら必ず医療機関を受診しましょう。

 繰り返しになりますが、がんは定期的な検診で早期に発見し、治療につなげれば9割が治ります。あなたと、あなたの大事な家族を守るため、がん検診を受けましょう。