胃がん発症の連鎖を断ち切るため、若い世代を対象に抗体検査に踏み切りました。
二次医療圏での実施は全国初の試みですが、長い目での効果を期待しています。

―由利本荘市とにかほ市は本年度から市内中学2年生を対象に、胃がんの発生因子とされるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の抗体検査事業を行っていますね。二次医療圏内では全国初となる事業の目的や実施に至った経緯を教えてください。
ご存じのように、本県の胃がんの死亡率は極めて高く全国ワーストが続いています。当地でもご多分に漏れず、13年度の死亡率は由利本荘市で人口10万人当たり65・9人、にかほ市55・4人と全国平均の38・7人を大きく上回っている現状です。一方で、がん検診の受診率は同年度由利本荘市11・2%、にかほ市16・1%にとどまっています。
胃がんをはじめとする消化器系疾患の発生因子としていくつかの要因が指摘され、中でもピロリ菌が大きく関わっていることが世界保健機関などから報告されています。ピロリ菌はかつて飲料水など環境的な要因で感染していましたが、上下水道の整備などにより、親子など家族間での感染に移行しつつあります。
ピロリ菌の感染は胃の酸性がまだ弱い、おおよそ5歳までに確定するとされています。ピロリ菌による胃がん発症の連鎖を断ち切るため、若い世代を対象に抗体検査に踏み切りました。同時に、検査を通じがん検診受診や生活習慣の大切さを刷り込むとともに、親にも受診を勧奨するという波及効果も狙っています。
本市の長谷部誠市長が、ピロリ菌研究を進めている東京医科大学と話し合い、同大と由利本荘医師会、由利組合総合病院の協力を得て、二次医療圏である本市とにかほ市を対象に実施することができました。
1次、2次検査までを無料で実施し、陽性の生徒のうち希望者の除菌を行うシステムです。1次検査は学校での健診時に尿を検査、陽性の判定者には同病院で尿素呼気検査を行い、ここでも陽性となった生徒について、親、医師を交えて話し合い、希望者の除菌を行います。除菌に当たっては通常1万円ほどの費用のうち千円の自己負担をお願いしています。
初年度の本年度は約600万円の予算で両市14校の2年生と、3年生の希望者計1819人を対象に実施しました。中学生を対象にしたピロリ菌の抗体検査は県内で初めて。二次医療圏での実施は全国初の試みですが、長い目での効果を期待しています。
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