若い世代のがん発生因子を除くと同時にがん検診受診を意識付けることが目的です。

(2015年8月12日 付)

胃潰瘍を治療したという親からは「もっと早く事業を展開して欲しかった」との意見も寄せられました。

由利本荘市健康福祉部長
太田 晃さん vol.2

―由利本荘、にかほ両市の中学2年生を対象にしたピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)抗体検査事業の実施に当たり留意したことは。また、市民や生徒の父母らからの反応を教えてください。

 事業実施を前にしたことし2月、事業に協力していただいている由利組合総合病院や東京医科大学の医師らとともに両市内14中学校すべてに出向き、PTAで保護者らに事業内容を説明しました。その際、父母らからは親から子へのピロリ菌感染に関する質問や、どうすれば保護者自身の抗体検査が受けられるか、といった問い合わせが寄せられ、ピロリ菌に関する関心が喚起されていることを実感しました。

 一方で、子どもが「陽性」となった場合、会員制交流サイト(SNS)などで「いじめ」の対象となったり、話題に上げられたりする恐れがないかと、心配する声も寄せられました。このため、生徒のプライバシーの保護に最大限配慮した取り組みをしています。学校での健診に合わせて行う1次検査の結果は、市から個別に直接通知。2次検査も生徒同士が重ならないよう実施時間を振り分けています。生徒が自ら語らない限り、検査結果は分からないように工夫しています。

 実施初年度の本年度、抗体検査を受けた生徒は由利本荘市97・4%、にかほ市95・7%と極めて高率となり、事業への理解が得られたと感じています。実施後、かつて子どもが胃潰瘍を治療したという親からは「もっと早く事業を展開して欲しかった」との意見も寄せられました。

 抗体検査事業には「がん教育」の側面もあり、家庭でがん検診受診の重要性を話題にし、受診を習慣づける意識づくりにつなげたいと考えています。

 がんの中でも、胃がんをはじめとする消化器系のがんは検査技術と医療技術の発展に伴い、早期発見、早期治療により治る病気となりました。事業は若い世代のがん発生因子を除くと同時に、がん検診受診を市民に意識付けることを目的にしています。本県のがん死亡率は高いまま推移しています。多くの市町村にとっても極めて有益な事業だと思います。