秋田県の胃がんによる死亡率が全国で最も高いことを考えれば、極めて有意義。

(2015年8月26日 付)

除菌による予防効果があるわけですから、できるだけ若いうちに除菌することが望ましいと考えられています。

東京医科大学講師・由利組合総合病院医師
草野 央さん vol.1

―由利組合総合病院の2次医療圏である由利本荘、にかほ両市が、本年度から中学2年生を対象にピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の抗体検査を行っています。医師として事業に携わる立場で、ピロリ菌と胃がんの発生について解説してください。

 ピロリ菌は胃の中に生息している細菌で、胃がんや胃かいよう、十二指腸かいようなどの発症に関与していることはさまざまな研究から明らかになっています。感染すると胃に炎症を起こしますが自覚症状はありません。炎症が長い間続くと胃の粘膜の胃酸を分泌する機能が低下する萎縮性胃炎、さらにがんになる恐れも高くなります。

 国立国際医療研究センター国府台病院の上村直実院長の調査では、ピロリ菌に感染していない人で10年間に胃がんになった人はゼロだったのに対して、感染者の2・9%に胃がんが発症したことが判明しています。肺がんにおける喫煙と同じようにピロリ菌も胃がんのリスクとなっています。

 また、早期胃がんの内視鏡治療後では、ピロリ菌を除菌した人の新たな胃がんの発症は、除菌しない人の3分の1に下がっています。除菌により胃がん発症のリスクが低減することが明らかになったのです。除菌による予防効果があるわけですから、できるだけ若いうちに除菌することが望ましいと考えられるようになっています。

―2次医療圏での中学生への抗体検査は全国初ですが、医療の立場からどのように見ていますか。

 秋田県の胃がんによる死亡率が全国で最も高いことを考えれば、若い世代を対象に同じ医療圏内で検査をすることは極めて有意義なことだと思います。除菌については、軟便や下痢、味覚異常、アレルギー反応などの副作用が伴うこともあり、実施にはさまざまな考えがあることと思います。ただ、学校の検診に合わせて尿によるピロリ菌感染検査をすることによって、感染の有無を知ることは極めて大事なことです。