行政が中心となり行うことで全中学校を網羅でき、画期的な事業だと評価できます。
早期発見につながるがん検診の検診率ががん死亡率を左右するといってもいいのです。

―由利本荘市とにかほ市が中学2年生を対象にピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の抗体検査を行う事業について、医師の立場からどのような効果や結果が得られると思われますか。
他県でも中学生のピロリ菌抗体検査を行っているケースはありますが、大学病院などによる単独での実施が多く、対象が特定の学校などに絞られているのが実情です。こちらでは行政が中心となって行うことで、由利組合総合病院の2次医療圏の全中学校を網羅できており、画期的な事業だと評価できます。
また、両市がPTAなどの協力を得て事前に保護者にも十分な説明を行ったことも意義が大きいです。これが、対象者ほぼ全員が検査を受けるという事業の好スタートにつながったことは間違いありません。
ピロリ菌はかつて飲料水など生活環境に伴い感染するケースが多く、日本人の感染率も欧米に比べ高かったのですが、上下水道の整備などにより、特に若い世代の感染率は欧米並みに低下しています。ただ、親子間の接触などにより中学生でも感染しているケースは見受けられます。
前回もお話ししましたが、除菌には副作用のリスクも排除できないので、中学生のうちは感染が判明しても市の補助を受けて除菌するかどうかは本人や保護者の判断に任せていますが、感染の有無を若いうちに知るということは意義深いことなのです。
―秋田県は、がん死亡率が高く全国ワーストが18年続いています。がんで死なないため県民にメッセージをお願いいたします。
がんの原因であることが分かるもの、例えばピロリ菌などは除菌することで発症リスクは低減できます。あとは、食生活の改善です。消化器系のがんとの因果関係が指摘される塩分の過剰摂取や飲酒・喫煙なども見直したいですね。検診技術と医療の進歩による早期発見、早期治療によってがんは死に至る病気ではなくなりました
普段の診療を通じて感じているのですが、秋田の人はお人好しで好きなのですが、控えめ。診察でも医師の言うことに相づちを打つだけという人が多い。自らの身を守るためには、診察や検診で医師や保健師に自分の体についての疑問や意見をどんどんぶつけて欲しいと思います。
- (1)秋田県の「がん」による死亡率は17年連続で全国ワーストとなっています2015年5月27日
- (2)わが国の医療は世界トップレベル 「がん」も死に至る病ではなくなった2015年6月10日
- (3)県民のがん検診受診率10~20%台 国の目標に遠く及ばないのが現状です。2015年6月24日
- (4)治せる病気になった今、検診でがんが見つかることは、大きなメリットなのです。2015年7月8日
- (5)胃がん発症の連鎖を断ち切るため、若い世代を対象に抗体検査に踏み切りました。2015年7月22日
- (6)若い世代のがん発生因子を除くと同時にがん検診受診を意識付けることが目的です。2015年8月12日
- (7)秋田県の胃がんによる死亡率が全国で最も高いことを考えれば、極めて有意義。2015年8月26日
- (8)行政が中心となり行うことで全中学校を網羅でき、画期的な事業だと評価できます。2015年9月9日
- (9)早期治療で治るにもかかわらず受診率が低い状態が続いているのは残念。2015年9月23日
- (10)定期的に受診することが早期発見、早期治療のためには不可欠なのです。2015年10月14日
- (11)検診を受診していない人に直接電話で受診を勧奨するコール・リコール事業2015年10月28日
- (12)若い世代の発症率が増加している子宮頸がん!!20歳になったら頸がん検診を受けましょう。2015年11月11日
- (13)秋田県は残念ながら1997年以来18年連続で全国ワーストとなっています。2015年11月25日
- (14)受診率を上げるために壁となるのが、60歳以上の受診率の低さです。2015年12月9日
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- (16)それぞれの検査の特徴を理解して、がん検診コースを受診していただきたい2016年1月27日
- (17)「がん」の「早期発見」のために。1回の検査でほぼ全身をカバー。2016年2月10日
- (18)がん検診受診率を国、県の目標である50%に上げていくことが大きな課題です。2016年2月24日
- (19)生活習慣に起因するがんも多いので、予防には生活習慣の改善が不可欠です。2016年3月9日
- (20・完)あなたと、あなたの大切な人のために「がん検診」を受けましょう。2016年3月30日