行政が中心となり行うことで全中学校を網羅でき、画期的な事業だと評価できます。

(2015年9月9日 付)

早期発見につながるがん検診の検診率ががん死亡率を左右するといってもいいのです。

東京医科大学講師・由利組合総合病院医師
草野 央さん vol.2

―由利本荘市とにかほ市が中学2年生を対象にピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の抗体検査を行う事業について、医師の立場からどのような効果や結果が得られると思われますか。

 他県でも中学生のピロリ菌抗体検査を行っているケースはありますが、大学病院などによる単独での実施が多く、対象が特定の学校などに絞られているのが実情です。こちらでは行政が中心となって行うことで、由利組合総合病院の2次医療圏の全中学校を網羅できており、画期的な事業だと評価できます。

 また、両市がPTAなどの協力を得て事前に保護者にも十分な説明を行ったことも意義が大きいです。これが、対象者ほぼ全員が検査を受けるという事業の好スタートにつながったことは間違いありません。

 ピロリ菌はかつて飲料水など生活環境に伴い感染するケースが多く、日本人の感染率も欧米に比べ高かったのですが、上下水道の整備などにより、特に若い世代の感染率は欧米並みに低下しています。ただ、親子間の接触などにより中学生でも感染しているケースは見受けられます。

 前回もお話ししましたが、除菌には副作用のリスクも排除できないので、中学生のうちは感染が判明しても市の補助を受けて除菌するかどうかは本人や保護者の判断に任せていますが、感染の有無を若いうちに知るということは意義深いことなのです。

―秋田県は、がん死亡率が高く全国ワーストが18年続いています。がんで死なないため県民にメッセージをお願いいたします。

 がんの原因であることが分かるもの、例えばピロリ菌などは除菌することで発症リスクは低減できます。あとは、食生活の改善です。消化器系のがんとの因果関係が指摘される塩分の過剰摂取や飲酒・喫煙なども見直したいですね。検診技術と医療の進歩による早期発見、早期治療によってがんは死に至る病気ではなくなりました

 普段の診療を通じて感じているのですが、秋田の人はお人好しで好きなのですが、控えめ。診察でも医師の言うことに相づちを打つだけという人が多い。自らの身を守るためには、診察や検診で医師や保健師に自分の体についての疑問や意見をどんどんぶつけて欲しいと思います。