遠い風近い風[井川直子]産地という強さ

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 秋田の食と酒を知りたい、と言うシェフを案内することになった。彼は東京でイタリア料理店を営んでいる。さて、夏の秋田の何を見てもらおう? 岩牡蠣(がき)、じゅんさい、ミズ、スイカ、そして比内地鶏「あきたシャポン」。しかし私の中で、風にそよぐ緑の田んぼは外せなかった。イタリア料理の人に、日本酒だけど。

 であれば横手の日本酒「天の戸」の浅舞酒造だ。杜氏(とうじ)の森谷康市さんは、私が現代の宮沢賢治と呼ぶ人。米の花が咲く夏に稲の花見、秋には穂波の美しさを皆に伝える詩人である。花見には早かったが、横手駅に着くと杜氏自ら迎えてくださった。

 ご存じの通り、酒を蔵で造る期間は冬。造りのない夏、ここの蔵人は農家になる。契約農家も含めて自分たちで育てた米を、田んぼと同じ水系の水で醸す、曰(いわ)く「半径5キロの酒造り」だ。

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