遠い風近い風[小嵐九八郎]自殺の誘いからの脱出

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 当方に責任があるのだが、アルバイト先の大学の講座がだらけたり、居眠りする学生が増えると、少しは集中してもらうためにあれこれ足掻(あが)く。その一つに「次の大作家の中で例外がいる。誰か」と質問し、黒板に書く「太宰治、島尾敏雄、三島由紀夫、大江健三郎、村上春樹」と。学生で解(わか)る者は、かなり嬉(うれ)し気に「大江健三郎」と正解を答える。芥川賞を貰(もら)っているたった一人だ。

 その次に「芥川龍之介、太宰治、川端康成、三島由紀夫、遠藤周作」のうちの例外を問うと、これは意外に正解者はほとんどいない。心中や介錯(かいしゃく)つきの割腹などで自らの死を選ばなかった大作家はカトリックの信者ということもあっただろうが遠藤周作のみだ。設問する俺の方は予(あらかじ)め答を知っているくせに「どうだ」という表情を作ると、学生は静かになり、暗くなる。当方も未来のある作家志願の若者に変な質問をしてと束(つか)の間、後悔する。

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(全文 1298 文字 / 残り 891 文字)

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