社説:羽後町DMO 住民参加の観光振興を

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 国内外から観光客を誘致する動きが全国で盛んだ。観光庁に登録し、地元経済関係者や行政、宿泊施設などが一緒に地域の観光振興に取り組むDMO(観光地域づくり推進法人)の設立が相次いでいるほか、2020年東京五輪を控えて訪日外国人客の取り込みも徐々に熱を帯びてきた。

 県内で注目される活動の一つが、秋田市の旅行会社主導で昨年発足した「羽後町DMO」の取り組みだ。単独の町で活動するDMOは県内で唯一。羽後町DMOの取り組みと同時に、住民側にも観光振興に一役買おうとする動きが出始めており、その点からも注目される。

 国はDMOで地方創生を主導する狙い。登録した組織は、国の地方創生推進交付金などを活用できるメリットがある。県内では、ほかに大館市など県北4市町村の「秋田犬ツーリズム」が活発な取り組みを展開しており、今後は横手市や男鹿市、鹿角市でも活動が本格化することが見込まれる。

 羽後町DMOは「羽後町留学」と銘打ち、日本の原風景が残る町内で里山や郷土食、伝統芸能を学ぶことをテーマに10日間ほど滞在してもらうプログラムを用意。外国人向けに日本語教育や西馬音内盆踊りの体験も交えた内容で、タイや台湾から誘客の実績がある。来年2月にも台湾から15~20人の「留学生」が滞在する予定だ。

 農作業や山菜採りをして畳の上で寝る―。そうした農村の日常を見せようと、羽後町DMOは農家民宿などとの関係づくりに力を注いできたが、当初は地元に拒否反応もあったという。ところが最近、住民自らが観光振興に参加する組織づくりや試みが町内で目立ってきた。

 その一つは、住民による「羽後町観光ガイドの会」で、今年10月末に発足。50、60代の11人が地域の歴史や文化を学んでいる。羽後町は西馬音内盆踊りなど全国的に有名な観光資源に恵まれているもののガイド組織がなく、これまでは役場職員が案内を担うなどしてきた。

 もう一つは、地元のそば店主らが立ち上げた「西馬音内そば協会」。200年前から食べられてきたという「冷やがけそば」で知られる「西馬音内そば」を地域活性化につなげようと、老舗など8軒の店主らを含む会員26人が結束し、先月初めて「西馬音内そばまつり」を開いた。

 いずれもDMOとは別の独自の活動だが、DMOとこうした「住民発」の取り組みが連動し、まちづくりを展開していければ理想的だ。観光客に農村の日常や体験を味わってもらうためには、そこで生活する住民や文化の担い手の参加が不可欠だからだ。

 観光客と触れ合い、地元の観光資源や文化を伝えることは、住民にとっても足元の価値を再認識する大切な機会となるはずだ。DMOと住民発の活動の相乗効果に期待したい。