社説:米中貿易摩擦 報復の連鎖を断ち切れ

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 米中両国間の貿易摩擦が一段と激しさを増している。米国は3日、新たに知的財産権を侵害しているとして、中国への25%の追加関税の対象候補としてハイテク分野を中心に約1300品目を挙げた。これに反発した中国は4日、報復措置として米国から輸入する大豆や自動車など106品目に25%の追加関税を課す方針を発表した。米国の追加関税については世界貿易機関(WTO)に提訴した。両国とも5兆円相当の品目が対象となる。

 米中間の貿易を巡っては、2月に米国が中国と韓国の太陽電池製品と大型洗濯機を対象とする緊急輸入制限(セーフガード)を発動。さらに3月23日には、鉄鋼とアルミニウムの大量流入が安全保障上の脅威となっているとして、それぞれ25%、10%の関税を課す輸入制限に踏み切った。中国は報復措置として今月2日に、米国産の果物や豚肉など128品目に15~25%の関税を上乗せする制裁を発動していた。

 報復の応酬は不毛である。世界1、2位の経済大国の貿易摩擦の激化は世界経済にも深刻な影響を与える。

 トランプ大統領の一連の措置が、世界への影響や長期的な国益を考えてのこととは思えない。公約に掲げた「米国第一主義」の保護貿易政策を振りかざす行動は、秋の中間選挙に向けて自身の支持基盤にアピールしたいとの狙いが見える。古くからの製造業地帯であるラストベルト(さびた工業地帯)など、グローバル化に被害者意識を強める米国民を満足させるために対外政策を利用するというものだ。米国内で関税分の価格への上乗せ、貿易の停滞となれば、消費の減退、輸入品を原材料として使う企業の生産力低下が懸念される。

 一方で中国の知的財産権の侵害、過剰生産の鉄鋼輸出が問題となっている。中国も米国に対抗するだけでなく、自ら問題の改善に努める必要がある。

 米中間のみに目が向けられがちだが、日本も鉄鋼、アルミニウムの輸入制限の対象となっていることも見逃すことができない。米国は中国同様に、日本との貿易赤字が巨額であり、輸入制限を日本との自由貿易協定(FTA)の交渉に向けた材料にしたいとの狙いも垣間見える。安倍晋三首相は今月17日からの訪米で予定されている日米首脳会談で、撤回を強く主張するとともに、米中両国の対立の回避と対話による解決を粘り強く働き掛けていくべきである。

 第2次世界大戦後の経済をけん引してきたのは自由主義貿易である。米中両国が感情的に報復を繰り返せば、自由主義貿易体制が一層揺らぐことにもなりかねない。早急に報復の連鎖を断ち切らなければならない。2国間で解決策が見いだせないようであれば、WTOの多国間の枠組みで是正を図ることが求められる。