社説:憲法記念日 改憲の論議深まったか

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 きょう3日は憲法記念日。日本国憲法は1946年11月3日に公布され、翌47年5月3日に施行された。今年で施行から71年を迎えた。

 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を基本原理としている日本国憲法は、施行から一度も改正されていない。米国、カナダ、フランス、ドイツなど主要国が複数回にわたって改正しているのと比較しても、一線を画してきたとも言える。

 昨年の憲法記念日に安倍晋三首相(自民党総裁)が「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明したのを受けて、自民党の改憲論議が加速した。首相が改憲の具体的スケジュールまで明示したのは初めてのことだ。背景には衆参両院で国会発議に必要な「改憲勢力」が3分の2以上の議席を占めていることもある。

 自民党が3月までにまとめた改正条文案は(1)9条への自衛隊の明記(2)教育の充実(3)緊急事態条項の新設(4)参院選の「合区」の解消―の4項目についてだ。

 中でも焦点は9条改正である。自民党案では安倍首相の提案に沿って、戦争放棄の1項と、戦力不保持などを定めた2項を維持して、別立ての「9条の2」として「必要な自衛の措置をとるための実力組織としての自衛隊を保持する」を加えた。

 安倍首相は「自衛隊を憲法に明記するだけで、現状と変わらない」と説明している。そもそも何も変わらないのであれば、改正する必要があるだろうか。

 「必要な自衛の措置」とはどこまでの範囲を指すのか。解釈によっては集団的自衛権の全面行使容認につながるとの指摘もある。憲法に自衛隊を明記しても、自衛隊の任務、権限がどうなるのかが不明確なままでは判断のしようがない。

 他の3項目についても▽教育の充実はどうやって財源を確保するか▽緊急事態条項の新設は災害対策基本法など現行法で対処可能ではないか▽参院選「合区」解消は「1票の価値の平等」との整合性をどう取るか―といった意見や疑問が出ている。

 共同通信社の憲法に関する世論調査では、改憲が「必要」「どちらかといえば必要」が58%で、「必要ない」「どちらかといえば必要ない」の39%を上回った。安倍首相の下での改憲には61%が「反対」で、「賛成」は38%にとどまった。自民党案については、4項目全てで「反対」や「不要」など否定的な意見が肯定的な意見を上回った。時代に合わせた改憲は必要としつつも、安倍政権で急いで改憲することは求めないという国民世論が浮き彫りとなった形だ。

 安倍首相が目標時期を明示して改憲への意欲を表明してから1年。改憲への論議は深まったと言えるだろうか。国民が安倍政権に求めているのはスケジュールありきの論議ではない。「数の力」で改憲発議を急ぐようなことがあっては、国民の理解は到底得られない。

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