社説:地上イージス説明 住民の安全守れるのか

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 防衛省は、秋田市と山口県萩市が候補地に挙がる地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(地上イージス)に関し、近く説明に訪れたいとの意向を秋田、山口両県に伝えた。佐竹敬久知事は防衛省との面会について6月上旬を軸に調整する意向だという。

 政府は昨年12月、北朝鮮に対する弾道ミサイル防衛(BMD)の強化策として地上イージス2基を導入することを閣議決定。本年度予算に、地上イージスの基本設計費や地質測量調査費など関連費7億3千万円を盛り込んでいる。

 秋田市新屋町の陸上自衛隊新屋演習場が候補地となっていることが判明したのは昨年11月だった。地元住民は不安を募らせてきたが、防衛省から県への連絡はそれから半年が過ぎている。配備には地域の理解と協力が不可欠なはずだが、国の姿勢は住民らをないがしろにしているように見え、非常に残念だ。

 配備の前段となる調査候補地決定に当たっては、小野寺五典防衛相が衆院予算委員会で「地元首長の理解と協力が必須」と言明している。この言葉を防衛省は重く受け止め、佐竹知事、穂積志秋田市長との面会に臨んでもらいたい。

 候補地に挙がる演習場は住宅地に隣接しており、小中学校、高校も近くにある。電磁波による健康被害や電波障害が危惧されるほか、攻撃されるリスクが高まることも懸念されている。国防は政府の専権事項とはいえ、地方自治体の首長は、住民の生命の安全や健康を守る責務があることを忘れてはならない。その視点に立ち、知事、秋田市長は毅然(きぜん)とした態度を示すことが必要だろう。住民の安全が確保されないまま現地調査にゴーサインを出せば、県民、市民の強い反発を招くことが予想される。

 防衛省にとって、調査することに対し住民の理解を得ることも不可欠だ。知事、秋田市長との面会と併せ、地元住民への説明会を開いてほしい。そこで住民の疑問にしっかりと答え、不安を払拭(ふっしょく)する必要がある。そうしない限り事業は前へ進まないだろう。

 地上イージスを巡っては、安倍晋三首相が「北朝鮮の弾道ミサイルの脅威から日本全土を24時間、365日切れ目なく防護する能力を抜本的に向上させる」と有効性を強調している。しかし、地上イージスに地対地ミサイルを装備すれば、日本の基本方針である専守防衛を逸脱する恐れがあるとの指摘もある。これに対し、政府は逸脱しない根拠をいまだ示していないのが現状だ。

 地上イージス配備の閣議決定時、緊迫していた朝鮮半島情勢は一変し、北朝鮮の非核化に向けた南北首脳会談が実現し、米朝首脳会談も控えている。こうした状況を踏まえ、地上イージスの必要性などを改めて国会で議論することも求められる。

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