社説:カジノ参院審議 採決の強行許されない

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 国会は働き方改革関連法成立を受け、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案など残る重要法案を巡る参院での与野党攻防に移った。

 整備法案は先月19日の衆院本会議で可決されたが、重要法案にもかかわらず審議時間は20時間程度で、議論は全く深まらなかった。カジノ整備に伴うギャンブル依存症の発症リスクを解消するための有効な対策を政府与党がいまだ示せていないのが実情といえる。そうした状況を置き去りにしたまま採決を強行することは許されない。与野党間で議論を尽くすことが求められる。

 安倍晋三首相は国会で「地域が活性化するとともに日本全体の経済成長につながる」と強調してきた。果たしてそうか。日本人客の入場制限を見ても年間120日も通える内容だ。新たな依存症者をつくってしまうだけでなく、高い射幸性を求める依存症者がのめり込み、症状を一層悪化させる懸念がある。地域の治安悪化も危惧される。そもそも収益はカジノで負けた人たちのお金だ。それを使って地域活性化、日本の経済成長を目指そうという発想自体を疑問視する声は根強い。

 IRを巡っては、2016年12月に整備法案の前段であるIR整備推進法案を与党が採決を強行。国論を二分した政策を2週間の拙速審議で通した経緯がある。焦点だったIR整備の必要性についての国民の理解は十分に得られていない状況だ。

 だが今回の整備法案の衆院通過もまた、成立を最優先にした安倍政権が抵抗する野党を数の力で封じ込めた。真摯(しんし)な姿勢で国会運営を進めると言明していた安倍首相だが、強引な手法は以前と全く変わっていないことが図らずも示された。

 共同通信が先月実施した世論調査では、実に69%が「今国会で成立させる必要はない」と回答しており、国民が慎重審議を求めていることは明らかだ。政府は民意にしっかりと耳を傾ける必要がある。

 来年は春に統一地方選、夏に参院選が行われる。政府与党が国会を今月22日まで延長したのは、整備法案などの今国会内の成立が目的だ。法案を早期に成立させ、これらの大型選挙への悪影響を最小限に抑えたい思惑が透けて見える。だが「国民不在」の国会運営では安倍政権への不信感が払拭(ふっしょく)できないところまで高まる可能性があることを肝に銘じてほしい。

 法案には多くの問題点が指摘されている。カジノ事業者に日本客への金銭貸し付けを認めることでギャンブル依存症を誘発しないか。刑法が賭博を犯罪としているのにカジノを合法とするのは法秩序の整合性を損なわないか。なぜ依存症対策の詳細な仕組みなどの重要項目が審議の不要な政省令や規則に委ねられるのか。政府が一つ一つの疑問に丁寧に答えることなしに、採決はあり得ない。