北斗星(7月12日付)

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 横手市の叔父に、ボウリングをする人形が載った金メッキのトロフィーをよく見せられた。地元のボウリング場主催の大会で獲得した物だった。四十数年前のブームの頃である

▼東京・田端でカップやメダルなど記章の製作会社を長く営む同市出身の小松田正五郎さん(85)は「業界でトロフィーが最も売れた時代」と言う。近年はトロフィーより記念盾が重宝され、しかも金属製はクリスタルガラス製に取って代わられた。特に文化系の賞で顕著という

▼金属製が減ったのは、飾り物としての人気の衰退に加え、高齢化による職人不足が影響しているとのこと。そういえば、細かな文様や彫刻を施したトロフィーを見なくなった気がする。小松田さんは「ガラス物はメッキも不要で、職人が少なくてもできる」と話す

▼金属製トロフィーの需要が今も高いのがスポーツ大会の記念品。伝統のある大会ほど継承され、彫刻の造作も細かい。職人技は、返還したトロフィーの代わりに贈るレプリカ製作で命脈を保つ

▼世界で最も有名なのは、ロシアで開催中のサッカーワールドカップのトロフィーだろう。高さ37センチ、重さ6キロの純金製は、勝利を喜ぶ2選手が両手で地球を支えるデザイン。手にする国は4日後に決まる

▼ただ、優勝国は実物を持ち帰れない。盗難防止のため国際サッカー連盟(FIFA)が表彰式直後に回収し、レプリカを渡すからだ。勝者が得るのは、わずかでも実物に触れられる濃密な時間ということか。