社説:米中貿易戦争 暴走阻止へ各国連携を

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 米通商代表部(USTR)は、中国の知的財産権侵害に対抗し、9月にも追加制裁を発動する方針を明らかにした。先月決定した500億ドル(約5兆5千億円)分とは別に、年間2千億ドル(約22兆円)に相当する中国からの輸入品の関税を10%上乗せする。これに対し、中国は必要な報復措置を打ち出すことを表明した。

 一部発動が始まった米国の制裁第1弾は企業向けのハイテク製品が中心だったが、今回は一般消費者向けの品目が多く、米国民の暮らしに直結するとみられる。トランプ米大統領が自国民を犠牲にしてまで進めようとする理由はどこにあるのか。対中貿易赤字の縮小が目的なのだろうが、理解し難い。

 報復の連鎖は今後さらに激化する恐れがある。世界の二大経済大国の貿易戦争の突入により、世界経済は大きな危機に直面したことは間違いない。

 米国は中国、日本、欧州連合(EU)などを対象に、鉄鋼25%、アルミニウム10%の追加関税を課す輸入制限を発動しており、日本に対しては自動車の高関税を検討している。一連のトランプ外交は、世界が希求してきた自由貿易の枠組みを根幹から揺るがすものであり、これ以上、トランプ氏の暴走を許してはならない。

 中国は今月、米国の制裁関税に対する報復として、年間340億ドル(約3兆8千億円)相当の米国製品に25%の追加関税を課す制裁措置を発動した。それに米国が即座に反応、報復に出た形である。

 トランプ氏の最近の言動は全て11月の中間選挙を見据えたものとみられてきた。実績をアピールし、選挙を有利に進める狙いがある。だが、もくろみ通りになっているとは言い難い。中国の制裁措置発動は、大豆や牛肉など与党共和党の票田である農業州を主な標的としており、米国農家に大打撃を与えるのは明らかだ。中国にとってはトランプ氏の支持層を標的にすることで本人に自制を促す狙いもあったはずだ。

 しかし、ブレーキの利かないトランプ政権を止めることはできなかった。今回の米国の追加制裁方針で見えてくるのは、自国第一主義ではなく、露骨な自分第一主義の姿勢である。トランプ氏は支持層に配慮することよりも、自分のメンツ、感情を優先させたといえる。

 2008年9月のリーマン・ショックによる世界的経済危機を見れば分かるように、経済は1国だけの問題ではなく、国家間の密接な経済活動の上に成り立っている。保護主義的な動きは世界経済の維持・発展を阻害する要因になる可能性が高い。先月の先進7カ国(G7)首脳会議でも、米国の保護主義的な通商政策に対する打開策は見いだせなかった。日本を含む世界各国が一層団結し、トランプ外交を軌道修正させるための具体的な方策を考える必要がある。