遠い風近い風[畑澤聖悟]ジンコちゃんの世界

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 ミジンコは体長2ミリほどの甲殻類である。世界中に分布し、浅い池や水たまりに生息する。平常、すなわち環境の良いときのミジンコはすべて雌。雌だけで単為生殖する。

 私が顧問を務める青森中央高校演劇部に、「ジンコちゃんの世界」という芝居を書き下ろしたのは2016年9月のことである。

 春、庭先にできた水たまり。そこにミジンコの「ジンコ」が誕生した。ひとりぼっちのジンコは、やがてミドリムシの「ミドリ」と出会う。友情を育む2匹。だが光合成ができるミドリと違い、ジンコは何か食べなければ生きていけない。何かとは自分より小さなプランクトン、つまりミドリである。友情か生存かの選択を迫られ、泣きながらミドリを捕食するジンコ。栄養を得たジンコはやがて単為生殖で子を産む。子から孫が生まれ、孫からひ孫が生まれ、やがて年老いたジンコは世界に満ちあふれた子孫たちに囲まれて息を引き取るのである。

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