北斗星(8月10日付)

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 「はいさい ぐすーよー ちゅーうがなびら(こんにちは みなさん ご機嫌いかがですか)」。那覇市の会議や集まりでは、出席者がまず沖縄の方言であいさつするのが決まりという。同市の「はいさい・はいたい運動」の一環だ

▼「はいさい」は男性が使うあいさつの言葉。「はいたい」も同じだが、使うのは女性。市担当者は「沖縄の方言を使えない人が増えている。だが方言は沖縄の歴史文化の原点。なくすわけにはいかない」と話す

▼これを始めたのが当時那覇市長だった翁長雄志さんだ。著書「戦う民意」(KADOKAWA)に「自分たちの言葉を復権し、守り育てることが、人々の誇りと尊厳をはぐくむはず」と記している

▼翁長さんが逝った。享年67。2014年の沖縄県知事就任以降も、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設阻止を掲げ、反対運動をけん引し続けた。「イデオロギーよりアイデンティティー」を掲げ、保革の枠を超え「オール沖縄」で基地問題に立ち向かうことを実現させた

▼差別を強いられてきた沖縄県民の誇りと尊厳を取り戻そうという闘いでもあった。政府の強硬姿勢にもひるむことはなかった。翁長さんが大切にした言葉がある。「百聞は一見に如(し)かず。百見は一考に如かず。百考は一行に如かず」。歩んだ人生そのものである

▼地方自治の在り方にも一石を投じた。県民のために。最後まで一貫していた真の政治家だった。道半ば。早すぎる旅立ちとなった。