社説:自民党総裁選 具体的な未来像を示せ

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 20日投開票の自民党総裁選に立候補した安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長の実質的な論戦がスタート。党本部で両氏が所見を発表した。経済政策では、好調な経済を実績として強調する安倍氏に対し、石破氏は地方創生を軸とした経済の再生を訴え、現政権との違いを鮮明にした。ただ両氏とも、実現に向けた具体的手法を示しておらず、説得力に欠ける訴えが目立った。

 北海道の地震で候補者の所見発表が延期される異例の展開となったが、次の国のリーダーを選ぶ非常に重要な選挙である。限られた時間を最大限活用し、自民党員はもちろん国民に対しても、国の進むべき未来像をどのようにつくり上げるかを示さなければならない。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」に関しては地方への波及効果を疑問視する声は大きい。今年6月の全国世論調査では56%が不支持だった。石破氏はこのアベノミクスに対抗する形で経済の再生を政策の柱に据えた。「地方こそ成長の力」とし、中小企業や農林水産業を最大限伸ばしていく必要性を訴えた。社会保障の改革でも独自策を打ち出した。

 総裁選でまず求められるのは安倍政権2期6年間への評価である。経済政策はもちろん、厳しさを増す借金頼みの財政、福島第1原発事故に伴うエネルギー政策、米軍基地問題、対米、対北朝鮮外交などこれまで取り組んできた安倍政治を冷静に総括することが重要だ。

 とりわけ現政権による強引な国会運営の是非について討論する必要がある。「安倍1強」の下、安全保障関連法や「共謀罪」法など多くの重要案件の採決を強行してきた。またイラク派遣部隊の日報隠蔽(いんぺい)、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんなど政権に関わる不祥事も相次いだ。そのたびに安倍政権への国民の不信感は増大した。

 加計(かけ)学園、森友学園で大きな批判を浴びた安倍氏は所見発表で「批判を真摯(しんし)に受け止め、改めるべき点は改めたい」と謙虚な姿勢を見せた。だが昨年10月の衆院選大勝時に「丁寧に説明する」と約束したものの、その言葉を実行していない。総裁選で現政権のマイナス部分も積極的に取り上げ、各問題について議論を深めることが、党の信頼回復の第一歩となることを肝に銘じてほしい。

 憲法改正を巡って安倍氏は9条に「自衛隊を書き込む」と決意を口にした。これに対し、石破氏は「改憲は必要なもの、急ぐものから始める」とし、参院選「合区」解消と緊急事態条項新設から順次実施したい考えを示した。8月の世論調査では「次期総裁に期待する政策」について「改憲」を挙げた人はわずか7・4%だった。法令を整備すれば改憲は必要ないとの声も根強い。なぜ改憲が必要なのか、納得できる説明をすることも両氏には求められる。