北斗星(9月12日付)

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 「今日は沐浴(もくよく)する日だなあ」。古代の公務員は今で言うカレンダーを見ながら、こんなふうにつぶやいたのだろうか。秋田市の秋田城跡で出土した1200年以上前の暦の内容を知り、想像を膨らませた

▼古代の暦は暦日のみならず季節や吉凶などが具(つぶさ)に注記されていることから「具注暦」と呼ばれる。専門家によると、今回出土した暦は778年4月30日から5月3日までのもので、2日のところに「沐浴」と注が付いていた。当時は沐浴する日や爪を切る日も暦で指定していたという

▼かつて暦作りは国家の事業だった。中国の暦法を基に陰陽寮(おんみょうりょう)という部署が11月までに翌年の暦を作り、地方にも頒布した。役所で儀式をするのに必要だったほか、農閑期に人々を公共事業に動員したりと政策を進めるよりどころにもした(吉川弘文館刊「日本史を学ぶための古代の暦入門」)

▼「律令国家の暦による支配は最北の城柵まで漏れなく行き渡っていた」と秋田城跡歴史資料館。政策から生活に至るまで暦は都の流儀を行き渡らせるための重要なツールだった

▼さて、今の政権は「早く帰る日」の普及に熱心だ。消費喚起や働き方改革を目的に昨年、月末の金曜をプレミアムフライデーに設定。だが民間企業の取り組みは低調なままだ

▼漢字のみの具注暦の利用は役人や貴族にとどまり、庶民に広まったのは後に仮名の暦ができてからという。「早く帰る日」も使い勝手を考えない限り、浸透に時間がかかるかもしれない。

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