社説:沖縄県知事選 辺野古、正面から議論を

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 翁長(おなが)雄志知事の死去に伴う沖縄県知事選が告示され、4人が届け出た。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を争点にした選挙戦がスタートした。安倍政権の全面支援を受ける前宜野湾市長佐喜真淳氏と、移設反対を訴える自由党前衆院議員玉城デニー氏の事実上の一騎打ちという構図だ。

 沖縄最大の懸案である辺野古移設を巡っては埋め立て工事が本格化しつつある中、県が埋め立て承認を撤回したばかりだ。それだけに県のリーダーを決める知事選は重要な意味を持つ。各候補は移設問題にどう向き合うのかしっかりと説明する必要がある。

 残念なのは、佐喜真氏が辺野古移設の是非を明言しない戦略を取ろうとしていることだ。2月の名護市長選で、政権支援の新人が「辺野古隠し」を徹底し、反対派現職に大勝した成功体験を模倣したとみられる。自らの政策・主張を明らかにしないのは、移設問題に苦しむ多くの県民を愚弄(ぐろう)する行為だ。

 佐喜真氏は「対立や分断からは何も生まれない」と対話の必要性を訴える。だが、辺野古移設を強力に押し進めようとする政府との対話から生まれるものは一体何なのか。「対立から従属へ」。そんな懸念が強いだけに国との関係をどう構築するかも明確にすべきだ。

 一方の玉城氏も翁長氏の後継として移設阻止を訴えているが、実現への具体策が主張からは見えてこない。沖縄の民意など介さない移設工事が着々と進む中、「いくら反対を訴えても無駄だ」といったあきらめムードも漂っている。強権的な政府を止める有効な手だてを示さなければ県民の心には強く響かないだろう。

 辺野古移設は1999年に閣議決定。2013年に当時の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が埋め立てを承認したが、翌14年の知事選で移設反対を訴えた新人の翁長氏が現職に大差で勝利。県民は移設に反対する意思を明確に示した。埋め立て承認を巡る問題は訴訟に発展、16年に最高裁で沖縄県側の敗訴が確定した経緯がある。埋め立て阻止を狙った今回の県の埋め立て承認撤回により、再び県と国の法廷闘争に発展する可能性は大きい。

 両氏には、辺野古移設問題を含めた米軍基地の負担軽減策を示すことも求められる。沖縄は、日本の米軍基地負担を一手に強いられてきた歴史がある。今も全国のわずか0・6%の面積しかない県土に、在日米軍専用施設の70%以上が集中している。この異常な状況を放置していいはずがない。

 現在の沖縄経済を支えているのは観光である。魅力は南国ムード漂う自然だ。豊かな自然を守りながら地域をどう発展させていくか。辺野古移設問題以外の課題についても議論を深める必要がある。中長期的な視点に立った沖縄の将来像を県民に明示してもらいたい。