遠い風近い風[畑澤聖悟]「母と暮せば」

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 「母と暮(くら)せば」は2015年に公開された日本映画。説明不要の大劇作家・井上ひさし氏が晩年に構想していた、「ヒロシマ」「ナガサキ」「沖縄」をテーマにした「戦後命の三部作」の遺志を山田洋次監督が引き継ぎ、長崎を舞台に映画化したものである。それがこのたび、井上氏が旗揚げした劇団「こまつ座」によって舞台化されることになり、その脚本の依頼がなぜか私に舞い込んだのである。

 井上氏の講演を拝聴したことがある。1999年夏の山形市民会館で開かれた全国高校演劇大会の記念講演。千人を超える高校生に向かって優しく強く語り掛ける氏の言葉に、いい年をした顧問の私も胸を熱くした。NHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」で産湯を使い、続く「ネコジャラ市の11人」で物心つき、大学1年の夏には開館5周年の秋田市文化会館大ホールで「十一ぴきのネコ」の舞台に立った。氏の作品はどれも特別である。紛れもなく私も氏の子供だった。

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