地域を味わう[山形・北前料理]繁栄伝える料亭文化

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旬の食材とともに提供される北前料理。あんかけ(中段右)や弁慶飯(前列右)むきそば(同左)などが代表とされる=山形県酒田市・割烹治郎兵衛

 江戸中期から明治にかけて、北海道、東北、北陸、西日本を結ぶ北前船の日本海航路は、日本経済の大動脈だった。その起点となったのが酒田港。最盛期は年2500~3千隻の船が寄港し、花街も栄えた。人口10万人の地方都市ながら、今も料亭文化が残り、北前船の遺産が重要な観光資源になっている。

 北前船で財をなした豪商・本間家の旧本邸や本間美術館の庭園「鶴舞(かくぶ)園」(国指定名勝)、廻船(かいせん)問屋鐙屋(あぶみや)の旧店舗・家屋(国指定史跡)、米を集積保管する山居倉庫…。船主や商人が利用した旧料亭相馬屋は、地元企業の平田牧場によって再生され、酒田舞娘(まいこ)の演舞を楽しめる相馬樓(ろう)=国登録文化財=として観光客でにぎわう。富が集まる酒田にはたくさんの画家や文化人が足を運んだ。その一人、竹久夢二が残した美人画「からふねや」などの名画は、相馬樓に展示されている。

 「酒田を代表する観光、文化資源は、多くが北前船の繁栄がもたらした遺産だ」と本間美術館の清野誠事務長(63)は言う。

 北前船で運ばれた京(関西)の影響は食に見ることができる。代表格が、くずを使ったあんかけ料理。400年以上続く5月の酒田まつり(山王まつり)のころには、旬のサクラマスに甘めのあんをかけた料理が家々で振る舞われた。貴重な砂糖を使ったもてなしの品だったという。同様にくずあんをかけたごま豆腐やうどんも食されている。

 こうした料理は「北前料理」とも呼ばれる。ゆでたそばの実をつゆに浸した「むきそば」や、みそを塗った焼きおにぎり「弁慶飯」などとともに郷土料理として料亭などで提供されている。

 来年10~12月の新潟県・庄内エリアデスティネーションキャンペーン(DC)のプレDC(今年10~12月)に合わせ、酒田市は「北前料理 酒田湊(みなと)膳」キャンペーンを企画。今年5月に山形市で開催されたインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2018日本酒部門で高い評価を受けた地酒とともに発信する。

 北前船寄港地は、酒田市が申請者となり、全国15道府県38市町が日本遺産に認定された。「板子(いたご)一枚下は地獄」の荒波を乗り越え、積み荷を売り買いして富を残した先人たち。その財産は今も地域を照らす光になっている。

 (山形新聞社)

【北前料理】

郷土色あふれる料理が並ぶ「北前料理 酒田湊膳」は今年10月~12月のキャンペーン期間中、酒田市内の料亭などで地酒とともに味わうことができる。事前予約が必要。問い合わせは市交流観光課TEL0234・26・5759