地域を味わう[新潟・佐渡天然ブリカツ丼]船乗りが運んだ恵み

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あごだしなど佐渡の素材を使った「佐渡天然ブリカツ丼」。汁物やデザートなども付く
あごだしなど佐渡の素材を使った「佐渡天然ブリカツ丼」。汁物やデザートなども付く

 「この家は狭い土地を有効に使うため三角形となりました」

 佐渡市小木地区宿根木。8月の日曜日、地元・南佐渡中学校の「宿根木観光ボランティアガイド部」生徒たちが、宿根木で有名な三角家の前で観光客に説明していた。同部では、毎年夏休みの土日にガイドを務め、観光客から「分かりやすい」と好評だ。

 江戸―明治時代初期、日本海側に多くの恵みをもたらした北前船。宿根木は佐渡島内でその恩恵を最も受けたと言っていいだろう。

 江戸期、小木湊(みなと)は佐渡金銀山で採れた金や銀の渡海場でもあり、北前船の寄港でにぎわった。湊近くの宿根木は北前船の回船基地として、船主や船大工、船乗りらが住んだ。江戸末期には約120戸ながら、佐渡の財力の3分の1が集まったほど栄えたという。

 近代化とともに北前船は役割を終えたが、狭い路地や板張りの外壁といった木造家屋が密集する、当時の町並みは残った。

 その町並みを後世にも残そうと住民たちが動き、1991年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。現在も県内での選定は宿根木だけだ。

 横浜市から訪れた野口イサオさん(39)は「石畳がすり減って歴史が感じられ良かった。保存しているだけではなく、人が住んでいるのにはビックリした」と感動していた。

 北前船で佐渡には食のほか日用品や言葉、文化といろいろな物が入ってきた。

 北前交易に詳しい佐渡文化財団の高藤一郎平・代表理事(67)はトビウオから取るだし、あごだしもその一つと話す。「『あご』は九州の言葉。北前船の船乗りたちによって佐渡に入ってきたのだろう」

 そのあごだしをタレに使った佐渡のご当地グルメが「佐渡天然ブリカツ丼」だ。あごだしだけでなく、佐渡沖で取れたブリや、トキとの共生を目指すため環境に配慮した市認証米、汁物やデザートにも佐渡産品を含むなど、調理条件も厳しいのが特徴だ。

 そのため2010年のスタート当初に比べ扱う店舗は減ったが、販売実数は伸び、8年で14万2千食に達した。自身のレストランで提供し「佐渡ご当地グルメ普及促進協議会」の伊藤哲夫会長(63)は「ブリカツ丼を目当てに来る観光客もいる。8年間ですっかり佐渡の名物として定着した」と自信を示す。

 観光で訪れた前橋市の品川幸恵さん(52)は、「あごだしを使っているせいか、深い甘みを感じ、どこかホッとする味」と目を細めた。

 (新潟日報社)

【重要伝統的建造物群保存地区】

住民が生活し、歴史的風致を形成する伝統的な建造物群を、文化財として保存する制度。市町村が申請し文化庁が選定する。保存対象は外観・構造で、内装は自由。1976年に岐阜県白川村などが初めて選定され、現在118地区。

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