北斗星(11月9日付)

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 「雪国秋田の春は、春ニシンの出稼ぎから始まります」。このナレーションで始まる映像に、すし詰めの列車に乗り込み、家族に見送られる男たちの姿があった

▼鉄路青森に向かい、北海道に青函連絡船で渡るのだろう。「鰊(にしん)大漁祈願 八竜村」などと書かれたのぼりも映っていた。「文化の日」の3日、秋田市の県公文書館で「県政映画上映会」が開かれた。そこで見た1956年3月の作品の一場面だ

▼県政映画は県が施策のPRなどを目的に55~79年に年間数本ずつ作った約10分の作品。当時は県内各地の映画館で公開された。上映会は、往時の秋田を懐かしんでもらおうと2009年に「県の記念日」の8月29日に初めて開かれ、翌年から文化の日と合わせ年2回開かれている

▼今回は56~69年の作品から選んだ5本が上映された。観光道路建設や農業振興といった県の施策を、冒頭の出稼ぎなどの話題と共に紹介する内容だった

▼66年11月の一編は工事の難所だった旧国鉄・生保内(現田沢湖)―赤渕(岩手県雫石町)間の18・4キロが結ばれ、田沢湖線が全線開通したことを伝えた。現在は秋田新幹線の円滑運行に向け、新トンネル整備構想が持ち上がっている区間だ。高速交通実現のために、往時から要所だったのだなと感じた

▼一連の県政映画が描いた未来には、右肩上がりの時代の明るさがにじむ。だが、懐かしんでばかりいてはいけない。次世代のために未来の秋田をどう描くべきか。考えを巡らせた。