社説:消費増税景気対策 制度設計の甘さ目立つ

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 現行8%が10%にアップする来年10月の消費税増税に向けて、政府が検討している景気対策が注目される。景気を腰折れさせず、いかに持続的な消費につなげるかが問われる。

 対策の一つがキャッシュレス決済のポイント還元だ。小売りや飲食など中小事業者の店でクレジットカードや電子マネーなどを使うと、通常のポイントに増税の2%分が上乗せされる。実施期間は増税から半年~1年程度。決済端末を備え、参加の名乗りを上げた店での買い物を対象にする見通しだ。

 だが日本では現金支払いが一般的で、キャッシュレス決済は浸透していない。経済産業省によると、キャッシュレス決済比率は2015年時点で韓国89%、中国60%、米国45%に対し、日本は18%。ポイント還元の効果は極めて限定的と指摘せざるを得ない。

 しかもカード会社は現在、加盟店を中小事業者か否かで識別していない。そのため中小に限ってポイントを上乗せするには大規模なシステム改修が必要になるという。政府の制度設計の見通しの甘さは明らかで、来年10月に間に合うとは思えない。

 不公平感が広がることも懸念される。政府はポイント還元する金額に上限を設けないとしており、買い物金額の多い富裕層ほど有利になる仕組みだ。自動車や住宅、ゴルフ会員権などは除外する方向で検討が進められているというが、対象商品の線引きは食料品などに導入する軽減税率でも難航した。今回も相当の時間がかかることは避けられないだろう。

 共同通信社が今月上旬に行った世論調査で、ポイント還元への賛否は賛成30・3%、反対62・1%だった。景気対策への反対が賛成を30ポイントも上回るのは異例。特に60代以上は76・3%が反対と回答しており、高齢者を中心に反発や戸惑いが広がっているのは明らかだ。

 一方、より幅広い層への効果を期待して検討が進められているのがプレミアム付き商品券だ。自治体が発行し、経費を国が負担する。2万円の商品券を購入すると、2万5千円分の買い物ができる仕組みだ。

 14年に消費税が5%から8%に上がった際、2400億円の国費を投じて実施された。いずれ買う物を前倒しした「需要の先食い」の面が強く、効果は限定的だったと指摘されている。今回も同じ轍(てつ)を踏むのではと懸念される。

 安倍晋三首相は所信表明演説で、来年10月の消費税増税に向け「経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる政策を総動員する」と述べた。背景には14年の増税の際に経済の低迷を招いたことがある。

 だが期待感は薄く、不備ばかりが目につく。何かやらなければと慌てて打ち出した取り組みのように見えてならない。混乱を招かないよう、腰を据えた対策が求められる。

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