社説:フレイル予防 健康寿命延伸の鍵握る

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 高齢化が進む中、「フレイル予防」が近年注目されている。フレイルは英語で虚弱の意味。健康な状態と要介護の状態の中間に当たる。日本老年医学会が2014年、加齢に伴って筋力や心身の活力が衰える状態をフレイルと呼ぶことを提唱し、健康維持に向けた早めの取り組みを呼び掛けている。

 フレイル予防は、運動・栄養・社会性の3要素を組み合わせた総合的な取り組みだ。筋肉など身体機能の衰えを防ぐための定期的な運動やタンパク質を多く摂取する食事を奨励するほか、うつや認知機能の低下など心の問題、閉じこもりや独り暮らし、孤食など社会との関係性が希薄化している高齢者の社会参加を促す。これが高齢者の健康維持につながることが期待される。

 高齢化率が36%超と全国で最も高い本県では、介護を受けたり、寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」を、いかに延ばすかが大きな課題である。県は「健康寿命日本一」を掲げ、「健康秋田いきいきアクションプラン」を策定して各種対策に取り組んでいる。

 本県の15年の平均寿命は、男性が79・51歳で都道府県別で46位、女性は86・38歳で44位。16年の健康寿命は、男性が71・21歳で最下位、女性は74・53歳で33位だった。県はアクションプランに▽適度な運動▽バランスの取れた食生活▽社会参加―の三つを柱に挙げている。フレイル予防の重点にほぼ重なるが、具体策に乏しい。他県で行われているフレイル予防の取り組みを参考に、本県も積極的に推進することが大切だ。

 東京大学高齢社会総合研究機構は12年から千葉県柏市の協力を得て、高齢者を対象にフレイル予防に向けた研究に取り組み、独自のプログラムを開発した。フレイル予防3要素に関するチェック項目に基づいて現状分析し、重症化を防ぐ活動を続けている。

 柏市では元気なシニア世代が講師を務め、市民講座でフレイルチェックを実施。食事や運動の傾向、外出回数など11項目の設問でフレイルの兆候を確認している。生活習慣の見直しに結び付いているほか、フレイルチェック自体が社会参加の機会になっているのは注目点だ。柏市と同様の活動は全国に広がっており、本年度末までに40自治体に上る見込みとなっている。

 厚生労働省も昨年度までフレイル予防のモデル事業を各地で実施。健康維持の面で一定の効果が確認されたとして、新たに保健事業ガイドラインに盛り込んだ。

 フレイルという言葉は、まだなじみが薄い。国は啓発活動にさらに力を入れるべきだろう。都道府県や市町村がさまざまな具体策を打ち出し、健康で生き生きした生活を送れる高齢者を一人でも多く増やしていくことが求められる。