地域を味わう:雑誌「自遊人」編集長・岩佐十良さんに聞く

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岩佐十良さん
岩佐十良さん

 食と観光の連携が全国的に進んでいる。「地域を味わう」と銘打った10紙共同企画・日本海スタイルの最終特集は、日本海美食旅(ガストロノミー)を提唱する岩佐十良さんのインタビューを紹介する。

 ◇  ◇

 ―「食」による町おこしが盛んです。

 旅の目的が変わってきている。昔は名所旧跡と自然だった。その後、旅行会社や出版社のアンケートで温泉が1位の時代が続いた。近年は食がトップ。ニーズの高い観光資源になっている。観光地には魅力的な食がないと駄目ということで各地が食をPRしている。

 ―「自遊人」は、ローカル・ガストロノミーという造語を使っています。

 ガストロノミーの本来の意味は美食学という学問だ。おいしさの背景にあるものは何かを理解する必要がある。食には地域の風土や自然、伝統、文化が内包されている。脈々と食べ続けてきた人々、そして地域の歴史が詰まっている。それらを料理人がどう表現するかが重要だ。世界の大きな潮流でもある。

 目先の入り込み客数や売上高だけにこだわった取り組みは、本質を捉えていない。A級グルメ立町を目指す島根県邑南町は人口の社会増が起きた。飲食店などを始める人がどんどん現れている。地元の野菜や文化が若者を引きつけ、起業につながった。地域の食が、観光資源だけでなく、大きな輪に広がっていく可能性を示している。

 ―日本海側の地域はどんな可能性を秘めていますか。

 江戸時代、北前船で物流が盛んになり、同時に極めて高い文化が流入してきた。明治中期以降、物流は山を隔てた太平洋側へ移り、日本海側にとっては厳しい時代が続いた。

 だが、それによって、文化や風土、歴史が化石のように残っていた。雪室に保存されていたような状態だったといえる。大事なのは、眠っていた宝をどう掘り起こし、世の中に出していくか。料理人の知恵と感性が問われている。

 料理を作る人はみんな料理人だ。例えば漬物は、おばあちゃんが生きてきた風土や歴史を表現している。みそ汁やおにぎりなんかもそうだろう。共通しているのは、地域のものを大切にしようという思いだ。

 ―「日本海スタイル」で取り上げた11府県の30自治体が、北前船に絡む日本遺産に認定されました。

 どの地域も素晴らしいポテンシャルを持っている。新潟や山形といった北前船の寄港地同士が結び付き、それが日本海ガストロノミーとして波及していけば面白いし、理想だ。

【いわさ・とおる】

 1967年、東京都生まれ。2000年に雑誌「自遊人」を創刊。活動拠点を東京から南魚沼市へ移し、14年に宿泊施設「里山十帖」を開業した。