社説:増田の重伝建5年 所有者支援に力入れよ

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 横手市増田町増田の町並みが国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されてから丸5年を迎える。観光客は増加傾向にあり、新たな活気が生まれている。一方で、後継者をいかに確保するかという重い課題が残ったままだ。「地域の宝」を今後どう磨き、守っていくべきか。選定5年を機に改めて考えたい。

 増田は細長い短冊形の敷地に主屋が立ち並び、東北では数少ない商家の町並みを残す。建物内部の内蔵は黒しっくいの重厚な扉や豪華な漆塗りの内装が特徴で、明治から昭和初期にかけての商人らの栄華を今に伝える。2000年ごろから内蔵が注目され、その後、豪雪地帯特有の切妻造りの主屋の価値も認知されるようになった。

 国が一帯10・6ヘクタールを重伝建に選定したのは13年12月27日。県内では1976年の仙北市角館町の武家屋敷通りに続いて2例目で、建築物130棟のほか、門や水路などが保存対象となっている。近年は駐車場や公衆トイレなどの整備が進み、飲食店や土産店はこの10年で7店増えた。

 町並みを訪れた人は重伝建選定翌年の14年度が12万4千人。その後いったん減少したものの盛り返し、昨年度は最多の14万1千人に上った。当初は団体客が中心だったが、最近では個人のリピーターも目立つ。住民のもてなしにハード整備が加わり、一帯の魅力は確実にアップしている。歴史的な町並みを観光振興につなげる機運を一層高めてほしい。

 目抜き通りの中七日町通りでは現在、家屋19棟が公開されている。10年前の約5倍だ。19棟のうち所有者が居住しているのは12棟。居住空間でもある家屋の公開には気苦労も多いだろう。それでも観光客の期待に応えるため自ら案内役を務め、蔵の特徴や増田の歴史などを丁寧に説明している。

 所有者の多くは高齢の夫婦で、一部は後継者がいない。「夫婦どちらかが体調を崩せば公開できなくなる」という声は切実だ。所有者が公開に応じられなくなれば特色ある内蔵などが見られなくなり、重伝建の魅力が半減しかねない。

 住環境の改善も大きな課題である。建物の外観の補修、復旧は補助の対象だが、内部を補修する場合は全額が原則自己負担となる。骨組みを変更できないなどの制約もある。市は所有者それぞれの意見をよく聞いてきめ細かなサポートに努め、歴史資産の保存・活用と住環境改善の両立策を探っていく必要がある。

 来年5月には全国の重伝建関係者でつくる協議会の総会が横手市で開催される。本県での開催は39年ぶり。建物の保存や後継者確保などで同じ悩みを持つ人たちと交流を深める重要な機会だ。観光振興の在り方も含め、今後のまちづくりにつながるヒントをつかみたい。