社説:税制改正大綱 中身ない目先の対策だ

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 自民、公明両党は2019年度税制改正大綱を決めた。同年10月の消費税率10%への引き上げに備え、景気の刺激策を優先。自動車税を恒久的に年最大4500円引き下げるほか、住宅ローン減税の期間を3年延長して13年とすることが柱だ。これにより国・地方の減収は計1670億円と見込まれるという。

 前回消費税率を引き上げた14年は、家計負担の増大によって消費が冷え込み、深刻な景気減速を招いた。その教訓を生かし、経済に悪影響を与えないよう対策が必要なことは理解できる。だが、飲食料品などを対象に導入する軽減税率をはじめ、歳出面で手当てするキャッシュレス決済でのポイント還元、プレミアム付き商品券など対策が既に計画されており、なぜここまで手厚くするのか疑問だ。

 これらを合わせた消費税増税に伴う景気対策の歳出は2兆円超に上るとみられ、増税による歳入増効果を相殺しかねない。国の借金は1087兆円(17年度末)に膨らんでおり、社会保障費などの財源を赤字国債で賄っている。財政健全化は本当に大丈夫なのか。

 税制改正は財政の再建を進める上で重要な役割を担わなければならないが、19年度大綱は期待外れの内容となった。少子高齢化、人口減に対応した抜本的な改革を進める意思が全く感じられないからだ。両党の検討作業では、増税前に参院選があることなどを色濃く反映。目先の対策に終始し、厳しい財政にどう立ち向かうかなど中長期的な視点を欠いた。

 政府は19年度当初予算案を過去最大の101兆円台半ばとする方針を固めた。当初段階で初めて100兆円を超える。社会保障費は18年度の33兆円から34兆円台に急増、防衛費も5兆2千億円を上回り過去最高を更新する見通しで、全体の3分の1は新規国債を発行して対応せざるを得ないという。残念なのは、消費税率を10%に引き上げても19年度の国債発行見込み額はさほど減らないことだ。何のための消費税増税なのか。ばらまき政策の問題点が露呈した。

 安倍政権は、12年の第2次内閣発足後、社会保障や公共事業といった政策経費を税収などでどれだけ賄えるかを示す「基礎的財政収支」黒字化の目標を掲げてきた。しかし経済成長頼みの側面が強く、収支は改善されなかった。政府はことし、従来の20年度までの達成目標を25年度に先送りしたが、それさえ先行きは不透明だ。黒字化へは、国民の税負担増など痛みを伴う改革が避けられない。まずは政府が身の丈に合った予算編成を示すことが必要だ。

 今回の税制改正は、自動車業界や住宅メーカーからの強い要望に応えた形だ。住宅ローン減税などは富裕層への優遇との指摘もある。税制の根幹は「公平、中立、簡素」。財政再建に向け、国民の納得いく税制改正こそが求められる。