社説:特殊詐欺被害 新たな手口、防止に力を

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 特殊詐欺の手口が多様化し、県内でも被害が後を絶たない。県警によると、今年は11月末時点で28件、5148万円の被害が確認された。昨年同期(44件、8124万円)より減ったが、それでも5千万円を超す多額の財産が県民から奪われている。被害防止対策をさらに強化しなければならない。

 特殊詐欺は、電話やメールなどを通じて被害者に指示し、金融機関の現金自動預払機(ATM)などから振り込ませたり、電子マネーで支払わせたりするパターンが多い。ところが今年になって、高齢者宅などを直接訪問してキャッシュカードをだまし取る新たな手口が全国で急増。県内でも11月末までに4人が被害に遭い、計624万円がATMから引き出された。

 警察官などをかたる者が訪れて「詐欺被害防止のため、カードと暗証番号を封筒に入れて厳重に保管するように」と告げ、持参した別の封筒に隙を見てすり替えてカードを奪うのが新たな手口だ。被害者4人中、3人は80代女性。1人で自宅にいる時に電話を受け、周囲に相談する間もないまま、大切な蓄えを奪われた。

 電話をかける役と家を訪れる役を役割分担し、犯行を実行する特殊詐欺グループは、複数の県を股に掛ける例が多いという。摘発には県警同士の連携が不可欠だ。

 キャッシュカードをすり替える手口で新潟県の80代女性から現金を盗んだなどとして、首都圏の男女4人が先月逮捕された。逮捕したのは秋田、青森、宮城、島根の4県警の合同捜査本部だ。被害者はどれだけいるのか、どういう経緯で接触してきたのかなど、事件の全容解明を急いでほしい。

 振り込みなどを要求する従来の手口では、金融機関などの声掛けが成果を上げている。県内の特殊詐欺被害の年間被害額は、2014年の3億1450万円余が一昨年8836万円、昨年8349万円と減少。今年は10月末現在でコンビニや銀行などで46件、1322万円の被害を未然に防いだ。こうした対策が奏功しているのを受け、詐欺グループが手口を切り替えた可能性があるという。

 若年層の被害も見逃せない。スマートフォンの有料サイトに接続したかもしれないと誤信させ、電子マネーで支払わせるなどの「架空請求詐欺」は昨年5354万円と依然多額に上る。

 県警は来年の重点目標に引き続き特殊詐欺対策を掲げた。従来ホームページで詐欺の手口を解説し、注意喚起してきたが、被害者はパソコンなどを持たない高齢者が多い。周知にはマンパワーが必要だ。

 警察官はもちろん、高齢者安全・安心アドバイザーらを通じた注意喚起に一層力を入れてほしい。家族や付近住民による声掛けも効果的だろう。地域全体で防犯に取り組み、特殊詐欺を締め出したい。