北斗星(1月12日付)

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 詩人吉野弘さんの作品に「漢字遊び」と題したシリーズがある。その中の「省」を取り上げた詩の一節に、「『省』をそのまま読み下せば〈少ない目〉/目が少なければ、見える範囲も狭いだろう/視野の限られたお役所では心もとない」とつづっている

▼中央省庁の劣化が指摘されている。財務省による森友学園問題を巡る決裁文書改ざんや厚生労働省の裁量労働制を巡る不適切データ問題など不祥事が続いた。信頼回復を急ぐべき時にまた不祥事が発覚した

▼厚労省の「毎月勤労統計」の調査が長年にわたり不適切に行われていた。調査数が少なかった上、全数調査に近づけるため補正処理までしていたというのだから始末が悪い

▼勤労統計は政府の経済分析の幅広い分野で使われる国の基幹統計。雇用保険の失業給付の過少支給など影響も大きい。問題を認識していながら、組織ぐるみで隠蔽(いんぺい)していたとすれば責任は重い

▼吉野さんの詩は「かくては、『省』も立つ瀬があるまいと/他の辞書を引きましたら、別の解説がありました」と続く。「『少』は『之』の変形/『之』の意味は〈行く・出る〉/従って『省』は〈行く目・出向く目〉/〈見るべきものに充分、目を配ること〉/〈隅々まで目の届くお役所〉こそが“何々省”」

▼省庁の体質を変える必要がある。内側にばかり視野が限られているようでは、広く隅々まで目を配ることはできまい。自らを省みることができないような省庁ならばもういらない。