時代を語る・西木正明(1)村医者になり損ねて

お気に入りに登録
※写真クリックで拡大表示します
書籍や資料であふれた自宅離れで執筆=昨年12月
書籍や資料であふれた自宅離れで執筆=昨年12月

 本当はおやじの後を継いで西木村(現仙北市)で医者になるはずでした。でもなり損ねましてね、40歳で物書きになりました。小説を世に出し始めて38年になります。いろいろドジを踏みながらやってきました。

 作家とか先生なんて呼ばれますが、そんな立派じゃありません。机に座るといくらでも文章が浮かんでくるような才能は私にはないですから。だから徹底的に取材しないといけない。そうしないと1行も書けません。いつも苦し紛れです。

 ただいくら才能のある作家でも、時には文章やアイデアが浮かばなくなって行き詰まってしまうようです。私の場合は取材で得た素材をベースにして文章を組み立てていくと作品になりますから、あまりそういう悩みを抱えたことはありません。才能がなかったおかげで長く物書きを続けてこられたわけです。

 他の人が書いたものを参考にする場合は、もう一度洗いざらい事実関係を調べて確認することにしています。すんなり信じず何でも疑ってかかる性格でして。例えばアメリカの国立公文書館から取り寄せた資料だってうそが潜んでいることがあるんでね。特にベトナム戦争関連の文書は多いです。現場の人間が保身のために事実と違うことを報告したのかもしれません。

 私のペンネームは古里の西木村からもらいました。本名は鈴木正昭。村は昭和31(1956)年の昭和の大合併で誕生したばかりで、デビュー当時はまだ二十数年しかたっていなかった。歴史が浅かったので、私が多少へまをして村名を汚すことがあっても許してもらえるだろうと思いましてね。鈴を西に変えるだけで済みますし。

 正昭は、おやじの正弘の「正」とおふくろの「アキ」をくっ付けた名前です。でもあまり昭和の「昭」という字が好きじゃなくて「明」と変えたんです。

この連載企画の記事一覧

秋田の最新ニュース