社説:県内小正月行事 足元の魅力知る契機に

お気に入りに登録

 県内各地で小正月行事が盛んに行われている。きょう10日も「大館アメッコ市」(大館市)や「刈和野の大綱引き」(大仙市)、「犬っこまつり」(湯沢市)などが予定されている。厳冬期に開催される昔ながらの素朴な行事は、観光客だけでなく地元に元気をもたらしてくれる。かけがえのない地域の財産を再認識する機会にしたい。

 小正月行事は、旧暦の1月15日に合わせ全国各地の農村で行われてきた。県内では、「雪中田植え」(由利本荘市鳥海町、北秋田市綴子など)、「六郷のカマクラ」(美郷町)、「火振りかまくら」(仙北市角館町など)、「男鹿のナマハゲ」(男鹿市)、「アマハゲ」(にかほ市金浦)など地域色豊かな行事が多く見られる。

 小正月行事に限らず、県内の多種多様な行事は地域住民が中心となって継承してきた。しかし近年は担い手不足などに直面し、途絶えてしまうケースが増えているのが実態だ。途絶えた行事の文化的価値は、観光客に人気のある県内の行事に劣るわけではない。行事の消滅は地域文化の衰退を意味するといえる。伝統の行事を守っていく手だてを改めて考える必要があるだろう。

 ヒントとなりそうなのが北秋田市七日市葛黒(くぞぐろ)集落(25軒)に約250年前から伝わるとされる「火まつりかまくら」だ。一時途絶えたが、2014年に15年ぶりに復活した。山から切り出した10メートルほどの神木(クリの木)を田んぼに運び、稲わらや豆殻を巻き付けた後、綱などで大勢の人が少しずつ立ち上げ、最後に点火する。燃え盛る神木に向かって「おーい、かまくらのごんごろう」と叫び合い、五穀豊穣(ほうじょう)や無病息災を祈願する奇祭。今年は17日に行われる。

 行事の担い手減少に加え、農作業の機械化に伴い稲わらが確保しにくくなったことが中断の理由だという。しかし地域活性化を目指す七日市の市民団体「おさるべ元気くらぶ」が集落に復活を働き掛けた。現在は、復活前の5倍以上に当たる約500人が見物に訪れている。

 注目されるのは運営の仕方だ。金融機関の助言を受け、インターネット上で運営費を募るクラウドファンディングをこれまで2回活用している。市からの助成金に頼らず、行事を継続する手法として参考になるのではないか。また神木に点火するまでの時間を利用し、雪中かるたや大声コンテストを開くなど、来場者を飽きさせない趣向を凝らしている点も面白い。

 火まつり復活は、地域資源をうまく生かせば広く注目を集め、地域振興の契機となることを示しているのではないか。

 伝統行事を継続するには地元の熱意が不可欠だが、時代に合わせた手法を取り入れる柔軟な考え方も求められる。どの伝統行事も絶やすわけにはいかない。魅力的な県内の小正月行事はそれを県民に伝えている。