北斗星(2月11日付)

お気に入りに登録

 横手市の岡本一寸平(ちょっぺい)さん(1898~1982年)は、地域で廃れかかっていた江戸歌舞伎の流れをくむ舞踊「岡本っこ」を苦労して復元し、「岡本新内」として再興、全国に広めた。唄、三味線に合わせて舞い、哀調を帯びた節回しと、男女の情愛を描いた歌詞が多いのが特徴。同市だけでなく、東京でも指導、普及に努めた

▼芸者としてお座敷を回っていた一寸平さんは、お客さんの言葉をヒントに「岡本っこ」を掘り起こそうと決意、地域のお年寄りたちに教えを請うた。その上で浄瑠璃の憂いを独自に加えるなどして、現在の形を完成させたという

▼多くの政財界人からも愛され、東京公演を成功させたほか、レコードデビューも果たし、岡本新内の知名度を高めた。81年には舞台芸能で活躍した個人らを表彰する「松尾芸能賞」の郷土芸能特別賞を受けている

▼一寸平さんの生涯をつづった小冊子「一寸平礼賛(らいさん)」が今月出版された。著者は門弟で元横手市長の千田謙蔵さん(87)。「行政の担当者がこともあろうに『いっすんへい』さんと間違っていたと聞き、このままでは岡本新内が廃れてしまうと危機感を持った」と執筆の動機を語る

▼岡本新内も多くの郷土芸能と同様に愛好者、後継者をいかに育てるかが課題である。芸能文化を知るためには、その継承の歴史を学ぶことが大切である

▼「一寸平礼賛」はその道しるべとなるはずである。岡本新内の春の集いと出版記念の会が3月10日に横手市で開かれる。