北斗星(2月28日付)

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 朝の通勤の道すがら、秋田市の川反通り沿いに流れる旭川を眺める。先日はカモの親子が悠々と川面を泳ぐ光景に出合い、気持ちが安らいだ

▼県内では羽を休める北帰行途中の冬鳥の姿も目にするようになった。運が良ければハクチョウや雁(がん)のきれいなV字編隊が見られる。待ちわびた春の訪れだ

▼季節に敏感な俳句愛好者からは早速投稿が届いた。22日付本紙文化欄には〈リーダーの引率見事今朝の雁〉〈白鳥啼き味噌熟成の村明ける〉。ともにこれから新しい物事が始まる予感に満ちている

▼高浜虚子も空を見上げ、雁の群れに心打たれたようだ。青森県の外ケ浜に伝わる雁供養を題材に〈雁風呂や海荒るゝ日は焚かぬなり〉と詠んだ。雁風呂は海岸の木片を薪(まき)に風呂を沸かすこと。雁が秋にくわえて浜辺に落とした枝を、春に再びくわえて帰ると考え、残った枝は死んだ雁のものとする俗信に由来する

▼雁風呂は、決まった時季に同じ場所に飛来するからこそ生まれた風習だろう。樋口広芳さん著「鳥ってすごい!」(ヤマケイ新書)では、鳥は太陽や星座、磁場、地形などを頼りに目的地を目指すとした上で、「優れた地図情報も持っているのではないか」と指摘する。いまだに未解明の部分は多い

▼あすから3月。学校の卒業式。友との別れ。多くの人が旅立ちを迎える。希望した大学に進めず、再挑戦を誓う高校生もいるだろう。目的の場所にたどり着けるよう羽ばたく―。新たな一歩を踏み出す時でもある。