時代を語る・内藤徹(1)法律通し世の中観察

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弁護士として活動して56年になる=秋田市中通の内藤徹法律事務所
弁護士として活動して56年になる=秋田市中通の内藤徹法律事務所

 昭和38(1963)年、弁護士として仕事を始め、以来50年以上にわたり、「法律という窓」を通して人の世を眺めてきました。犯罪やトラブルを扱う仕事のせいでしょうか、世の中、うまくいかないことの方が多く、人はどろどろとした感情を抱えた存在なんだという感慨を強くしています。

 裁判はよく難しいと言われます。難解な用語や理論が並ぶため、なかなか理解できないというのは、その通りでしょう。ただ私を含め多くの法律関係者は誰でも分かるように読み解く努力を続けてきたつもりです。事件や事故がどんなに複雑であれ、どんな法律を当てはめ、どう裁くかに関して、シンプルに論理や主張を突き詰め、説明する努力をしてきました。

 ちょうど10年前の平成21(2009)年、裁判の在り方が大きく変わりました。一般の市民が裁判員として刑事裁判に参加する制度がスタートしたのです。人を裁くことには常に難しさが伴いますが、この「裁判員裁判」では一層、中学生でも分かるほど明快な説明や論証が求められます。

 無実の人が罪を問われる冤罪(えんざい)事件の弁護にも幾度か携わりました。日本の裁判制度は「三審制」といって原則として地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所で争うことができます。ところが私が携わった弁護の中には、地裁、高裁、最高裁を行ったり来たりして計7回も裁判が開かれ、結局無罪となった冤罪事件がありました。しかも「疑わしきは罰せず」ではなく、全くの「ぬれぎぬ」だったのです。

 この無罪判決も、複雑に絡み合った事柄を丁寧に解きほぐし、検察側の立証を打ち破ったからこそ得られました。

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