北斗星(3月11日付)

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 横手市十文字町で毎週末行われている編み物教室がある。主宰するのは地元の佐藤弘美さん(47)。十数人の仲間と共に、カラフルな毛糸で靴下や帽子などを一つ一つ丁寧に編む

▼毛糸は東日本大震災翌年の2012年、宮城県気仙沼市に設立された会社から取り寄せ、皆でお金を出し合う。経営するドイツ出身の梅村マルティナさん(60)の復興に懸ける思いに共鳴。その活動を後押しするためだ

▼震災発生を受け、住んでいる京都から各地の避難所に毛糸を贈ったのが梅村さん。編むことでほんのいっときでも嫌なことを忘れてほしい。そんな思いからだった。願いは通じ、気仙沼で編み物の輪が拡大。地元雇用創出のための会社設立へと発展した。当初3人だった従業員は16人に増えた

▼佐藤さんは震災時、あまりの惨状に言葉を失い、無力感に襲われたと振り返る。同じ東北の人がこれほどひどい目に遭っているのに何もできない。自分を責めた。だからこそ復興のシンボルとも言える会社が気仙沼にできたと知り、即座に協力を決めた

▼壊滅的な被害にも負けず再起を期す人たちの助けになればと同社から毛糸を購入。地元の交流施設で13年から編み物教室を始めた。趣旨に賛同し、熱心に参加する仲間が支えだ

▼震災から8年。心配なのは、年月の経過とともに人々の心から被災地への思いが薄れてしまうことだ。「これからも復興支援を続けていこう。ささやかでも、できる限りのことを」。今改めて胸に誓う。

東日本大震災から8年。あの日からの日々を見つめました