社説:賃金統計不正報告 具体性欠く甘い調査だ

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 厚生労働省による賃金構造基本統計の不正問題について、調査を進めていた総務省行政評価局が報告書を公表した。

 賃金構造基本統計は政府が重視する「基幹統計」の一つ。労働者の職種や雇用形態別の賃金を把握するため毎年調査が行われている。都道府県労働局や労働基準監督署が雇用する調査員が、事業所を訪問して調べるのがルールだが、実際は調査票の郵送で済ませていたのが大半だった。さらに一部の職種を調査対象から勝手に除外する不正もあった。

 決められたルールを守って正確に行わなければ統計の信頼は維持できない。不正がいつから、どのように行われたかなど全容解明が不可欠である。

 だが報告書は、「事なかれ主義のまん延」「順法意識の欠如」などの表現で、問題を認識しながら放置してきた厚労省を厳しく指弾する一方、不正が始まった時期についてはあいまいだ。担当職員は10年以上前から認識していたとの見方を示すにとどまった。具体性がなく、これでは問題の根本的な解決につながらない。中途半端な調査と指摘せざるを得ない。

 厚労省の身内による調査では中立性に疑義が生じかねないとの懸念から、総務省がプロジェクトチームを設置して関係職員の聴取などに取り組んだ。ところが厚労省から提供を受けた資料は不十分で、労働局などが具体的に調査にどう取り組んできたのか分からずじまいだったという。

 菅義偉官房長官は「担当者とは異なる立場でメスを入れる」としていたものの、同じ霞が関の官僚が行う調査では踏み込みが甘く、限界があるということではないか。第三者による再調査を求めたい。

 不正の背景には、予算が少なくて調査員が不足する状況があったとされる。調査員1人で千カ所を超す事業所を担当する異常なケースがあることも判明した。だからといって現場の勝手な判断で訪問調査を郵送調査に切り替えられるとは思えない。何らかの指示や上司の了解があって不正が始まったとみるべきだ。実態が不明なままでの早期の幕引きは許されない。

 統計を巡る不正は、厚労省の毎月勤労統計で、東京都の事業所調査を本来の全数調査ではなく抽出調査で済ませていたことが昨年末に発覚したのが始まりだ。これによって国の統計への信頼は大きく揺らいだ。

 さらに1月に総務省が基幹統計の一斉点検を各省庁に指示したところ、厚労省は賃金構造基本統計の不正を把握していたにもかかわらず報告しなかった。そのことが、問題をさらに大きくした。

 都合の悪いことは隠蔽(いんぺい)する。そんな体質が染み付いているのではないか。統計調査は国の政策判断の土台となるものだ。政府には組織の立て直しに腰を据えて取り組んでもらいたい。