社説:英のEU離脱問題 合意へ統一見解を示せ

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 英国の欧州連合(EU)からの離脱期日が今月29日に迫る中、英下院は13日、EUと条件の合意のないまま離脱する「合意なき離脱」を拒否することを賛成多数で可決した。EUとの合意案が前日の英下院で否決されたことを受けて実施された。離脱延期の可能性が高まった。

 言えるのは、英政府も議会も「EUと合意した上で離脱したい」という認識では共通していることだ。EUとの合意に向けて議論を積み上げ、英国民が納得する「統一見解」をまとめ上げる必要がある。

 EU側の対応も注視される。EU離脱問題を巡り、英下院が求めているのは再交渉による合意案の見直しである。だがEU側は、合意なき離脱を排除するには「離脱合意案に賛成しなければならない」との立場だ。合意なき離脱も含め、今後の行方は予断を許さない。

 EUの了承が得られて離脱延期となった場合でも、英国内の混乱が収拾に向かう可能性は低い。現状では英EU間で再交渉を行っても、どちらも大幅に譲歩することは期待できないからだ。とりわけ英国では対立が先鋭化し、感情的になっている。英国、EUともに妥協点を探り、着地点を見いだせるよう努力することが求められる。

 EU離脱は2016年に国民投票で賛成多数で決定した。英EU間で離脱交渉が行われ、18年11月に合意に至った。だが今年1月、合意案は圧倒的大差で英下院で否決された。「合意案ではEUの経済枠組みに残れない」とする親EUの野党議員が反発したほか、「英国がEUの規則に将来的に縛られ続ける余地を残す」と与党保守党の反EU強硬派も反対したことが大きな要因だった。

 これを受けメイ首相は、合意案のうち反発の強い英アイルランドの国境の扱いを定めた条項などを巡りEUに再交渉を求めた。だが、結果は新たな合意があったものの大筋は変わらず、今回の一部修正した合意案も与党の反EU強硬派の賛同を得られなかった。

 EU側の強固な姿勢を見れば、英国が合意なき離脱に追い込まれる可能性も否定できない。その場合、英EU間の貿易に関税がかかるようになるほか、関税手続きが煩雑になって物流の遅延が発生する恐れがある。企業にとって不可欠である安定的な経営環境が大きく損なわれることは明らかだ。

 混迷が深まる中、企業の英国離れの動きがさらに拡大することは必至だ。日産自動車とホンダが相次いで現地生産見直しを決定するなど、日本メーカーの動きも目立つ。英国に工場を持つトヨタ自動車も合意なき離脱の場合は23年ごろにも英国内の生産から撤退する可能性を明らかにしている。外国企業が相次ぎ撤退する事態を多くの英国民は予期していなかったのではないか。英国はこうした現実も直視しなければならない。