社説:牛受精卵不正流出 適正な流通管理が必要

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 和牛の受精卵と精子を検査を受けずに不正に中国に持ち出したとして、家畜伝染病予防法違反などの疑いで、大阪の2人が大阪府警に逮捕された。日本の財産とも言える和牛ブランドの海外流出を防ぐために対策を早急に講じる必要がある。

 2容疑者は共謀して、昨年6月に家畜防疫官の検査を受けずに、和牛の受精卵と精液入りストロー365本を凍結保存容器に入れて、大阪市の港に停泊するフェリーに積み込み、中国に持ち出した疑いが持たれている。到着した中国で必要な手続きを経ていないとして持ち込みが認められなかったため、日本に戻り動物検疫所に申告したことで発覚した。

 農林水産省によると、和牛の受精卵、精液の輸出については家畜伝染病予防法に基づき相手国と衛生条件などで合意することが必要だが、現在日本と合意している国はない。検疫所などでの検査段階で確認された場合には飛行機や船に積み込むことができない。だが今回の大阪の事件では容易に検査をすり抜けてしまった。中国当局が持ち込みを却下したことで、水際で流出が阻止されたが、関係者からは「氷山の一角ではないか」といった声も上がっている。検疫所、税関での検査体制の強化が必要である。

 和牛の肉は高品質で海外での人気も高く、日本の主な輸出農産品の一つである。口蹄疫(こうていえき)や東京電力福島第1原発事故などで輸出が一時停止したこともあったが、近年は和食ブームもあって、輸出量、輸出額とも順調に伸びている。2017年は2707トン、191億円で、輸出額は5年で4倍近くに急増した。18年も好調で速報値では247億円までに伸びている。19年の農産物全体で輸出額1兆円という目標達成に向けて、牛肉がけん引している形だ。

 本県でもタイや台湾を中心に輸出が増えている。17年度は3トン、2080万円ではあったが、海外での宣伝、拡販活動が活発に行われており、秋田牛の知名度はアップしている。今後の輸出増に期待が高まる。

 こうした中で、和牛の受精卵などが流出して、海外で生産されるようなことになれば、好調が続いている輸出に水を差す事態にもなりかねない。海外産の和牛の肉が逆輸入されたりすれば、畜産農家への影響は計り知れない。

 事件を受けて、農水省は受精卵などの管理についての検討会を設置した。流通実態のアンケートも実施しており、月内にも公表する予定である。

 和牛は生産者や研究機関が長い時間をかけて改良を重ねてきた。日本には和牛の受精卵や精液の海外流出を防ぐ直接の法規制はない。それだけに、貴重な遺伝資源が適正に利用されるような流通管理システムを構築することが求められる。同時に受精卵を扱う関係者の意識啓発も大切である。

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