遠い風近い風[小嵐九八郎]滅びの前に

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 先週のいかにも春めいて暖かい日、電車に乗っていたら例によって優先席にスマホで頑張る若者ゆえに座れず、俺より三つ四つ年上と映る老人が立って吊(つ)り革に掴(つか)まっていたが、急に腰砕けになり座り込んだ。五十代らしい二人と六十代とおぼしき人が崩れた老人を寝かせ、俺も手伝い、一人が車掌へ知らせに急いだ。

 そしたら、優先席に座っていた二十代半ばと思える女の人が「お巡りさんに連絡が先よ。じゃなきゃガッコの先生」と急に声を張り上げた。当方は、車掌から駅員、それで救急車を呼んで病院へと運ぶのが大切と考えていたので「ええっ、何だあ?」と首を傾(かし)げてしまった。

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