北斗星(3月30日付)

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 アジアを旅した人なら、物売りの子どもたちにまとわりつかれて困った経験があると思う。商品は一輪の花だったり絵はがきだったり。無視して立ち去っても根負けして買っても、どこか後味の悪さが残るのは相手が子どもだからだ

▼秋田市出身のフォトジャーナリスト高橋智史さん(37)は、強権支配が続くカンボジア政府に立ち向かう人々の闘いをカメラ一つで追い続けている。現地での5年間の記録を収めた写真集「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」(秋田魁新報社刊)が第38回土門拳賞を受賞した

▼取材の原点は大学在学中の2003年9月、初めて訪れた同国で目にした光景だった。子どもたちがごみ山で金目になりそうな金属を拾い集めていた

▼そんな子どもたちは劣悪な環境にもめげず、毎日を必死に生きていた。金属を換金し、ささやかながらも生活を支えていた。そこには素朴で屈託のない笑顔があった。最初は貧しさという一面しか見ず、哀れみの目を向けていた自分を恥じた

▼以来現地に入り込み、先入観を排し、冷静な視点で取材することを心掛けたという。写真集から60点を選んだ写真展がきょうまで秋田市のさきがけホールで開かれている。午後1時からは高橋さんの作品解説が行われる(無料で参加自由)

▼写真集には圧政に苦しむ民衆の怒りや叫び、嘆き、悲しみが詰まっている。心を揺さぶるのは未来を夢見る子どもたちの笑顔。作品の魅力を引き立てている。