社説:「工芸士」認定制度 産地活性化につなげよ

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 「伝統的工芸品」の製作に携わる職人の生産意欲を高め、若手の人材育成を進めようと、県は本年度から独自の称号を与える認定制度を始める。経験に応じてベテラン、若手それぞれを対象に知事が認定する。技能継承とともに産業振興に寄与することが期待される。

 伝統的工芸品は、昔ながらの技術や技法、使用する材料が継承されているもので、国指定と県指定がある。国指定は全国に232品目、このうち県内には樺(かば)細工(仙北市)、川連漆器(湯沢市)、大館曲げわっぱ(大館市)、秋田杉桶樽(おけたる)(大館市、能代市)の4品目がある。県指定は、これらに川連こけし(湯沢市)、イタヤ細工(仙北市)、秋田銀線細工(秋田市)、大曲の花火(大仙市)を加えた計8品目だ。

 いずれも大切な地場産業として地域で引き継がれ、人々の暮らしを豊かにしてきたが、工芸品を取り巻く環境は大きく変わった。消費者の生活スタイルの変化や海外からの安価な代替品の流入により、近年は製品の販売額が大幅に減少している。新たな認定制度は、そうした傾向に歯止めをかける狙いがある。

 県内の国指定4品目について1998年度と2017年度を比べると、販売額は32億7千万円から21億9千万円に減少、従事者も1077人から436人に落ち込んだ。大館曲げわっぱは弁当箱製品の需要の高まりから販売額が上向き、従事者の目減りも最小限に食い止められているが、他の品目は軒並み減少しているのが実情だ。

 認定制度は県の「第3期あきた伝統的工芸品等産業振興プラン」(18~21年度)の柱の一つ。国指定の4品目については、これまで伝統的工芸品産業振興協会(東京)が技能の優れたベテラン職人を「伝統工芸士」と認定しており、県内には4品目合わせて69人いる。しかし県指定にそうした称号はなく、各産地から要望が上がっていた。

 新設される称号は「ふるさと工芸士」「准伝統工芸士」(いずれも仮称)の二つ。ふるさと工芸士は県指定のみの4品目が対象で、12年以上の実務経験がある高度な技術を持つベテランに贈られる。准伝統工芸士は県指定の8品目全てを対象に、6年以上の経験がある若手に贈られる。いずれも産地の組合や工芸士会の推薦を基に専門委員が審査する。

 職人が高い技術を身に付けるには長い期間と根気が要るため、途中で断念する者も少なくないという。新たな称号は、ベテランには長年の苦労に報いることにつながり、若手には大きな励みになるだろう。

 人口減少と少子高齢化に伴い、国内市場は縮小気味である。だが本県の伝統的工芸品が消費者に十分浸透しているとは言い難く、現状でもまだまだ伸びる余地がある。認定制度が産地の活性化に結び付くことを期待したい。