社説:森林バンク 災害防止へ迅速対応を

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 手入れをする人がいなくなった人工の私有林を市町村が管理する「森林バンク」制度が本年度、動きだす。森林荒廃を防ぐ新たな取り組みとして注目される。

 制度は昨年5月に成立した森林経営管理法に基づく。同法は森林の適切な管理は所有者の責務だと定める一方、所有者が高齢化して森林の手入れができなくなったような場合には、伐採や木材販売、造林などを行う「経営管理権」を市町村に移せるようにした。市町村はそれを林業経営者らに貸し出す一方、借り手のつかない森林は市町村が自ら管理する。

 人口減や少子高齢化に伴い、森林を管理する人は全国的に減少。木材価格の長期低迷で林業経営を諦めたり、相続がうまくいかず所有者不明になったりする例がある。間伐が行われなくなった森林は密生して十分に根を張れず、光が差し込みにくいため植物も乏しくなり、保水能力が低下する。この状態を放置すれば森林が荒廃し、大雨で土砂崩れなどが起きる可能性が高まる。制度を推進することによって、そうした災害発生の危険性を取り除きたい。

 財源には2024年度から個人住民税に年千円を上乗せする森林環境税が充てられる。課税が始まるまでの原資は国が借り入れで賄う。国民が広く費用負担する制度であり、着実に効果を上げていく必要がある。

 県内の森林は81万9千ヘクタール。このうち人工の私有林は26%に当たる21万3千ヘクタールに及ぶ。各市町村はまず、手入れが行き届いていない人工の私有林がどこにどれだけあるかを調べ、今後の管理をどうするかについて所有者に意向を聞く。市町村が引き受けるとなれば、今度はその森林が持続的に林業を行える適地か否かを判断。林業経営者に貸し出す準備に入る。

 県内25市町村のうち、本年度の当初予算に森林バンクに関する事業費を計上したのは12市町村にとどまる。他の市町村も6月か9月の補正で予算化する予定だが、さまざまな手順を踏み、手間がかかることを踏まえれば、できるだけ早期にスタートさせる必要がある。

 どんな体制で作業を進めるかも大きな課題だ。森林バンクには、私有林を集約して林業の活性化につなげる狙いもある。林業の適地かを見極め、施業計画を立てるには専門知識と経験が要る。だが市町村に森林管理の担当職員は少ない。森林面積が広いほど、作業量は膨大になる。地域の林業に関わる森林組合や林業経営者らとの連携は不可欠だ。国有林を管理する林野庁との連携も必要になるだろう。

 本県の私有林所有者の6割は保有面積が3ヘクタール未満の小規模林家。経営効率が悪いのが実態だが、集約して大規模化を図れば林業の活性化に結び付く可能性がある。そうした点を含め、総合的に森林管理を進めていくことが求められる。