北斗星(4月14日付)

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 思い浮かんだ短歌は携帯電話に打ち込み、保存しておくという。ノートや手帳に手書きするより、いつでも気軽に創作できるのかもしれない。現代の若者らしいなと感心した。若山牧水青春短歌大賞を2月、県内で初めて受賞した加藤菜々さん(22)=潟上市出身=のことだ

▼秋田西高の文芸部で短歌の魅力に目覚めた。2015年には高校時代の作品をまとめ初の歌集を刊行。秋田大では文芸部がなかったこともあり、一人で創作を続けた。その最後を飾ったのが大賞だった

▼「一人にはしないでください街中の非常用ボタンを押しそうだから」。昨年春、就職活動で悩んでいた時に生まれた作品。審査員には「切実な寂しさと、どこか童話を読むような懐かしさを感じる」と評された

▼この春、大学を卒業し県内に就職した。慌ただしさに紛れ、短歌に向き合う余裕がない日々が続いている。「今は仕事のことしか考えられない」というが、いずれ歌作りは再開するつもりだ

▼少子高齢化の進展に伴う担い手不足は経済や伝統芸能などの世界だけの話ではない。短歌、俳句、川柳など文芸の分野も若手育成は喫緊の課題といえる。加藤さんのように県内にとどまり、社会人になって短歌を続ける人は貴重だ。他の若者の刺激になってほしい

▼「環境が変化し歌も変わるのではないか。どんな歌になるか自分でも楽しみ」と語る。社会経験を重ねて独自の短歌表現を深め、県内短歌界に新風を吹き込んでくれることを願う。

県内に暮らす短歌の詠み人を訪ね、思いを聞く

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