北斗星(4月15日付)

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 芥川賞作家吉田修一さんの小説「平成猿蟹合戦図」(朝日文庫)は、大館市が主要な舞台の一つとなっている。東京・新宿の飲食店に勤務する若者が、思わぬことから古里大館市に戻って、衆院選に出馬する物語である。大館市の風景や方言が随所に登場する

▼「二年前に帰ってきた時より、ますます寂れてしまったじゃ。元々シャッター通りだったばって、そのシャッターもボロボロめでらもんなぁ」と中心商店街の衰退を若者が嘆いている。地域のお年寄りしか話さないような方言に、読者は理解できるのかと心配してしまう

▼市民会館での討論会の場面も出てくる。「この地域に必要なのはまず雇用じゃないでしょうか」「大きな観光資源になるものがあるのに、なぜ活性化できないのか」との市民の声が響く

▼同書は2011年に刊行された。小説の世界のことであり、単純に比較できないが、作中で指摘された課題のほとんどは大館市はもちろん多くの地方に今も当てはまることに気付かされる

▼統一地方選の後半戦がスタートした。県内で唯一の市長選が行われる大館市では、再選を目指す現職と新人の一騎打ちとなった。人口減や少子高齢化、産業振興などをテーマに激しい選挙戦が繰り広げられている

▼自らが住むまちの活性化、発展のためには、有権者一人一人が政治に関心を持つことが不可欠。「誰がなっても同じ」という考えでは何も変わらない。候補者の声に耳を傾け、貴重な1票を行使したい。