春の院展・秋田展[映る]小田野尚之・同人

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映る(小田野尚之・同人)
映る(小田野尚之・同人)

 鉄道好きの作者が、新幹線の車窓から見た近江鉄道沿線の田園風景を気に入り、見たままを写実的に描いた。作者は「地元の人にとっては当たり前の風景でも、私の目には幻想的な光景に映った」と語る。

 確かに水をたたえた田んぼや線路に立ち並ぶ架線柱、線路脇に茂った緑はどこにでもある風景のように思える。だが、風がやんだ一瞬、それは特別な光景に変わる。波のない水面(みなも)は鏡のように周囲を映し、不思議な広がりを生み出したのだ。作者はそれを見逃さなかった。

 「田んぼの水は数十センチしか深さがない。しかし、風景を映し込んだ水面の下には、果てしなく広がるもう一つの空間がある」と作者。そんな空間を際立たせるため、画面にはあえて電車を描かず、主役なき風景を丁寧に描き込んだのだろう。

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