社説:通年採用拡大 学生第一に議論進めよ

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 経団連と大学が採用と教育の在り方を話し合う「産学協議会」が中間報告を取りまとめた。春の新卒一括採用に偏り過ぎている慣行から脱却し、多様な方式による採用に向かうことが必要だとした提言などを盛り込んだ。政府の未来投資会議の議論に反映させる。

 実現すれば、横並びだった従来の方式が崩れて自由な採用活動が広がる。外資系企業やIT企業など一部で導入されている通年採用が、国内で拡大することになる。長年続いた日本型の雇用環境が大きく変わることは間違いない。

 肝心なのは、新卒一括採用からの脱却が、多くの学生にとってプラスになるかどうかだ。大学生活の中で就職活動の比重が高まり、学生の本分である学業がおろそかになっては本末転倒である。大学の形骸化にもつながりかねない。その点を十分考慮しながら、慎重に議論を進める必要がある。

 硬直的な採用方法では優秀な人材を確保できないとの危機感が背景にある。海外留学を終えた学生が夏ごろに帰国しても企業の採用活動が既に終わっていて、希望する企業に応募できないといった点も問題に挙げられる。留学などで経験を積んだことによって就職機会を逸する事態は見過ごせない。採用時期を通年に拡大すれば、そうした学生が就職しやすくなることは確かだろう。

 だが就職活動の目安がなくなることで、多くの学生はいつから就活を開始していいか分からなくなり、戸惑うに違いない。1、2年時から就職を意識せざるを得ない状況に追い込まれ、就活が長期化してしまうことが心配だ。春の新卒一括採用を改めるにしても、野放図であってはならない。

 経団連が採用面接の時期などを定めた従来の就活ルールを、2020年春入社を最後に廃止すると一方的に打ち出したのが昨年秋。いきなり何もなくなるのでは混乱が生じるとの声が上がり、21年春については政府が主導して行うことになった。22年春も政府主導により従来ルールで行う方向だが、依然として不安定な状態が続いている。

 優秀な学生が大企業に集まる傾向が強まり、中小企業にしわ寄せが及びかねないことも気掛かりだ。通年採用は、大企業に比べ少ない人員で採用活動を行っている中小企業には不利だ。これによって大企業と中小企業、大都市圏と地方の格差が一層拡大してしまわないかが懸念される。

 産学協議会は経済界と大学が継続的に意見を交わす場として1月に設立された。今後作業部会を設置し、具体的な仕組みづくりを検討。インターンシップの在り方なども話し合う。企業にとって必要な人材をいかに獲得するかという視点に終始してはならない。学生の将来を最優先にどんな採用がベストかを考えてほしい。