社説:まんが美術館再開 漫画文化の発信拠点に

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 改修工事のため休館していた横手市の増田まんが美術館が来月1日、リニューアルオープンする。およそ2年ぶりの営業再開だ。まんが美術館のほか図書館や郷土資料館などが併設されていた従来の複合施設を、漫画原画の収蔵、展示に特化した文化施設に改めた。日本を代表する文化である漫画の魅力を国内外に発信し、多くのファンや観光客を呼び込みたい。

 収蔵原画は、地元出身でまんが美術館名誉館長を務める矢口高雄さんら漫画家179人の計約22万点。国内外を見渡しても類を見ない規模といえる。後はこの貴重な財産をどう生かすかだ。新たに運営するのは指定管理者である増田まんが美術財団。スタッフは約20人だ。展示品を随時入れ替えるほか、工夫を凝らしたさまざまな企画を打ち出し、魅力アップを図ってほしい。

 西約400メートルには、国の重要伝統的建造物群保存地区である歴史的な町並みが広がる。豪華な内蔵などで知られ、年間10万人以上が訪れる。まんが美術館のリニューアルで一帯の魅力は確実にアップした。市はこれを生かし、回遊性の向上に力を注がなければならない。

 まんが美術館が複合施設の一角にオープンしたのが1995年。97年度に約14万人が来館するなど当初は人気を集めたものの、2016年度は5万人台にまで落ち込んだ。そのため市は打開策として図書館などを他の場所に移設。美術館の床面積は3300平方メートルと従来の10倍超に増えた。

 大きな役割に原画の保存と散逸防止がある。保存は基本的に漫画家個人に委ねられるが、個人で管理するのには限界がある。だからこそ数多くの漫画家が同館に原画の管理を託した。原画は適切な温度・湿度の下、保護用紙に包んで大切に保存される。精緻な筆致や修正液を塗った試行錯誤の跡など、漫画家の息遣いが随所に感じられる迫力ある原画を後世に残す意義は大きい。

 パリで競売にかけられた「鉄腕アトム」の原画が約3500万円の高値で落札されるなど、日本漫画の価値は世界で高く評価されている。多くが国外に散逸してしまった浮世絵と同じ轍(てつ)を踏まぬよう、さらなる原画収集が求められる。

 横手市にはまんが美術館を教育に活用する構想もある。漫画を描く技法だけでなく、視覚に訴える情報伝達力や、4こま漫画の起承転結の構成力などを学ぶ場にしたい考えだ。交流のある漫画家たちに協力を仰ぎ、可能性を探ってほしい。

 肝心なのは、地元横手市に加え、県内外から訪れる個々の漫画家のファンや観光客の心をつかみ、何度も訪れるリピーターになってもらうことだ。インバウンド(訪日外国人客)への対応も急務だ。応援団を増やし、地域の宝として大事に育てていきたい。

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