社説:憲法記念日 改憲の機はまだ熟さず

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 きょう3日は令和最初の憲法記念日。日本国憲法は施行から72年目を迎えた。安倍晋三首相は、9条の改正に意欲を見せている。夏の参院選で3分の2以上の改憲勢力を維持した場合、改憲への動きを活発化させる可能性がある。

 しかし、衆院憲法審査会は今国会ではまだ1回しか開かれず、それも1分で終了するなど、国会での議論は深まっていない。改憲手続きを定める国民投票法改正案の成立も見通せない状況だ。首相は持論に固執して改憲を急がず、与野党が冷静かつ率直に議論できる状況をつくる努力をするべきだ。

 首相は一昨年の憲法記念日に、2020年までに改正9条の施行を目指すと表明。戦争の放棄と戦力不保持を定めた9条1、2項は現行のままとし、自衛隊の存在を明記する文言を追加する。自民党が今年2月の党大会で採択した19年運動方針も改憲に道筋を付けるとした。

 自衛隊を憲法に明記しても自衛隊の任務や権限に変更はないと説明する。野党から変更がないなら改憲の必要はないと批判を受けたのは当然といえる。党大会では、改憲の必要性を訴える根拠として新たに「都道府県の6割以上が新規隊員募集への協力を拒否している」などと主張した。

 防衛省は全国の市区町村に対し、18歳と22歳になる住民の住所や氏名などの名簿提出を自衛隊法に基づき要請している。首相の主張に反して、実際には9割の自治体が名簿作成に協力している。首相の発言には大きな事実誤認があり、自衛隊明記案の根拠にはなりえない。

 首相は自衛隊を巡る違憲論争に終止符を打ちたいとも発言している。自衛隊は憲法の平和主義の理念とそれを具体化する9条に反しているとする批判は、自衛隊を9条に書き込むことでなくなるのだろうか。状況は一層混乱するのではないか。憲法には精緻な論理が求められることも銘記したい。

 共同通信社が先月行った世論調査では、明記案を支持したのは40%にとどまった。安倍政権下での改憲には反対54%、賛成42%。首相が目標とする20年改憲のスケジュールは反対が58%で賛成を20ポイント近く上回った。国民の理解が深まり、改憲の機が熟しているとは言いがたい。
 
 9条以外にも自民党は、大規模災害時に内閣の権限を強める緊急事態条項の新設や参院選の「合区」解消、教育無償化・充実強化も改憲項目に掲げている。世論調査では、緊急事態条項は反対が53%で、合区解消については賛成3割、教育無償化は「法律で対応できるので改憲は不要」が7割だった。

 これらの結果から浮かび上がるのは、自衛隊の明記案には慎重で、他の項目も含めて急がず丁寧な憲法論議を求める民意といえる。首相と自民党には、国民の声に真摯(しんし)に耳を傾けながら議論を深めることを求めたい。

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